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2005.08.03

『ふたりの人魚』

この作品はロウ・イエ監督の不思議なドラマです。
紹介や評によると結構よさそうな作品と知って見ました。どんな話しかは全然知りませんでした。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

2000年 日本=ドイツ=中国作品
ランニング・タイム◆83分
原題◆Suzhou he
英題◆Suzhou River
プロット◆別れた人を捜す男を語る話しのようです。◆人魚になった女の子は空想ではなかったという話しのようです。
音楽◆ホルダ・レンバーグ
アップリンク発売のDVDにて。画質はよいです。

キャスト
ジョウ・シュン→人魚のメイメイ/おさげのムーダン
チア・ホンション→バイク便のマーダー
画面に出ていないので不明な何でも撮るのが仕事の男

ロウ・イエ監督の演出はよいと思います。
押井守監督の『機動警察パトレイバー』(1989年)みたいな河からのショットが見事なタイトルから始まります。船の上では犬が鳴いてるとこもあり音楽まで似ていました。タイトル文字の出方も似ていました。こういうとこは真似をしたほうがいいです。素敵なタイトルでした。

途中から紹介の通りにアルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』(1958年)のような話しとなります。音楽も『めまい』のパーナード・ハーマンそのままでした。さすが海賊版天国のとこだと感心します。

ラストあたりは『機動警察パトレイバー2』(1993年)のようでした。音楽もそれ風になっていたりします。
なんだそれならタダのパクリかと思えば全然そんなことはなくてこれが見てて異常に面白い。何しろ人魚のメイメイが入れ墨のシールを唾を付けて貼っているとこだけでも見ててなるほどそういうふうにやるのかと面白いのです。他には裸電球のショットを見てるだけでもよかったりします。

上海が舞台なのですか。香港かと思ってたら違ってました。そのくらいわかりなさいとなります。そういえば香港にしては貧しい感じが強いようでした。

プロローグでメイメイは姿を消します。
最初にメイメイが「私が戻らなかった捜して」というセリフがあります。着替えるシーンも同じショットを繰り返し使っていました。
それでラストになってプロローグに戻る手法です。私はこの手法が好きなんです。普通の回想になっていないときがまたいい。

何でも撮るのが仕事の男のモノローグで話しは進行します。
この男は全編主観ショットで通していて顔が見えなかった。こういうのはギミックなのですが上手く使いこなしていました。
手持ちカメラのドキュメンタリータッチになっています。

ふらりと出かける人魚のメイメイを部屋から橋を見下ろす何でも撮るのが仕事の男は覗きの視点になっています。これがいいんです。
付かず離れずというより付きっぱなしのショットのサイズが適性なのがいいです。いきなり肝心なとこでカメラが引いてしまうと見てる方のエモーションを削がれるのです。これが他のボンクラ作品で結構多かったりします。

バイク便のマーダーが話しの中心となってくるとその手持ちカメラのドキュメンタリータッチなのにカットは細かく割るという手法になっています。
ドキュメンタリータッチにありがちな長回しはやっていません。半端な長回しをやられると、どのくらい演技が続けられる?と俳優の我慢大会を見てるようで本編どころではなくなってしまいます。半端ではない長回しは溝口健二監督作品で十分なので長回しはやらない方がいいと思えます。

バイク便のマーダーが出るとこはモノローグはなく主観ショットにもなっていません。全編主観ショットは正直いって飽きがくるのでこれで普通の映画になって見やすくなります。
カメラ1台で撮ったわけではないと思えますがそんな風にみえたりするとこがいい。
後半になってくると会話のシーンで切り返しを入れたりセリフなしのリアクションショットをあったりしてるのが興味深い。ドキュメンタリータッチの限界があるということかも。
ブラッド・アンダーソン監督の『ワンダーランド駅で』(1998年)もこんな感じでドキュメンタリータッチから映画本来の手法に変わっていました。

貧しい感じの橋の上のシーンから川島雄三監督の『州崎パラダイス 赤信号』(1956年)を連想します。この作品は橋のシーンで始まって橋のシーンで終わるプロローグに戻る手法だったりします。

変な話の進め方をしています。
物語を云々というセリフなんかは押井守監督風にも見えますが押井にはないとこがあるように思えます。それは人を思うということです。別に押井守監督にはこれが皆無ということではありません。少し苦手と思えるだけです。

赤いジャージーの女の子ムーダンを叔母の家に送るのがバイク便のマーダーは仕事の1つだったりします。そんなことからムーダン誘拐の片棒を担がされるマーダー。この俳優さんは終始無表情でした。これでいいと思えます。
このシーンの前に既に赤いジャージーの女の子ムーダンは登場しています。
ムーダンの父親は酒のズブロッカで大儲けしている設定。

大雨の夜にマーダーの家にやって来るムーダン。
帰りたくないとズブロッカを飲みます。
ジョウ・シュン扮するにおさげのムーダン。
ムーダンの時を見てるとこの人は12才位なのかいと思えました。ニットの胸を見るとそうでもないとなりますけど。
男(ラオB)の指示で動く女(シャオホン)とマーダー。
マーダーはムーダンを廃ビルに連れていきます。
廃ビルの屋上でムーダンが小用をすますのを見ているマーダー。これはまた印象深いシーンです。
廃ビルに連れてこられてこれが誘拐なのかと分かった時の顔をクローズアップショットの撮り方が二重合成のような感じになっていました。何だか面白い撮り方です。
私は45万元かと橋から河へ飛び込むムーダン。シチュエーションは違いますが絵的には何だかパトリス・ルコント監督の『橋の上の娘』(98年)そのまんまのような感じもしますがこれがいいんです。

この件でムショに入っていたマーダーはまた上海に戻ってきます。髪が伸びているので床屋に行き誘拐一味の消息を聞きます。2人とも死んでると聞く。
またバイク便の仕事をやります。

バーでメイメイと会うマーダー。バーの名前は開心館(ハッピー館)となっています。
バイク便のマーダーは消えたムーダンそっくりのメイメイが人魚になるとこを覗きます。『めまい』で花を買うマデリンを尾行してるジェームズ・スチュアートが覗いているとこと似ています。この辺から音楽はパーナード・ハーマンそのまんまとなっています。これがマイナスになっていないのがかえって凄い。

マーダーは尾行してメイメイの住んでいる船に行きムーダンのことを聞かせます。記憶が同じになればメイメイはムーダンになるのか?と興味深いシチュエーションです。『めまい』では同じ人にするのをメイクや衣装でやってましたがこの作品では記憶のみでやっています。記憶のみの方が安上がりでいいというと身もフタもないですか。

ところでメイメイとムーダンが同じ人には見えない。
髪形とメイクと衣装を変えただけでこうも違うのかは感心します。これは『めまい』と同じでした。『めまい』では白人女性だから見分けがつかないと思ったがアジア人女性でも見分けがつきませんでした。われながら興味深い現象です。

マーダーはビデオ屋の男と会います。
ここは相変わらずビデオ屋の男からの主観ショットを使用。
ムーダンの話しをします。

同じシーンの繰り返しの手法があります。
船から出て行くメイメイのシーン。下着姿がいい。
メイメイの服装。黒の下着。緑のスリップドレス。薄手の茶のジャケット。黒のコート。黒のカーディガンの場合もあったような。

雨のシーンが多かったりします。
バーの前でバイクを壊され殴られるマーダー。
街中を走ってるバイクやスクーターは日本製というか日本のデザインでした。海賊版のバイクも走ってるらしいので何ともいえず。
バイク便のマーダーが使うバイクは日本のではなかった。何で?。水平対向2気筒OHVエンジンのソ連製のドニエプルのコピーのようです。
壊されたバイクを修理しているシーンが何故か印象に残る。日本では部品交換はするけど修理はしないそうです。
ところで中国は左側通行?それとも交通規則はないも同然でどこを走ってもいいのでしたっけ?

またビデオ屋の男を会うマーダー。
妙に気が合うようです。ムーダンを捜す。お別れでとなります。
マーダーはコンビニでズブロッカを買う時に店員のムーダンを見つけます。
ズブロッカを飲むマーダーとムーダン。

遺体の確認に呼ばれるビデオ屋の男。ここも雨が降っています。
船に住んでいるメイメイに知らせます。遺体を見にいったメイメイはホントのことだったのかとショックを受けます。
で、プロローグに戻りビデオ屋の男のモノローグでエンドとなります。
「私が戻らなかった捜して」というセリフがあります

私は普通の回想でプロローグに戻る手法もいいけど、凝った回想ではないプロローグに戻る手法ならなおよろしいとなります。
妙な回想?の入り方をして時間の制御がよく分からずいまだにどういう風にプロローグに戻ったか理解出来ない『バニシング・ポイント』(1971年)や、プロローグで使われたセリフと同じセリフがラストにまた使われる『ダーティハリー』(1971年)とかがあります。

ポケットベルとモトローラ製でした。公衆電話を使っているシーンを見てて、タダで携帯を配っているわけでもないのに何で公衆電話を減らすんだ。日本は?と思いました。
海賊版ビデオを見ると字幕に出ていますがこれはビデオCDのことでしょう。

貧しいがシック。そんな感じに見えるのがよかった。日本映画ではこれがホントにむずかしいとこなのです。日本映画では貧しくて貧乏臭いのが多くて見てて気が滅入ってきます。豪華に見せようとするとやたらと成金趣味になってやっぱり貧乏臭くてこれも見てて気が滅入ってきます。

そんなわけでこれは佳作です。何というか不思議なよい作品でした。



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