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2005.08.04

『人狼 JIN-ROH』(1999年)

この作品は押井守の原作脚本で沖浦啓之監督の警察物ドラマです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1999年 プロダクションI.G/ING/バンダイ 日本作品
プロット 人間ではなく人狼だったという話しのようです。組織同士のせめぎ合いの話しでもあるようです。
バンダイ発売のDVDにて。画質はよいです。dtsにて。
音楽 溝口肇 あまり聞こえませんでした。スコアが悪いのではありません。2回3回と見れば聞こえてくると思います。

キャスト=VC
特機隊の伏一貴→藤木義勝
自爆した阿川七生→仙台エリ
阿川の姉と称する雨宮圭→武藤寿美
同期で公安の辺見敦→木下浩之
公安部部長 室戸文明→廣田行生
特機隊副長 半田元→吉田幸絋
特機隊隊長 巽志郎→堀部隆一
警備部長 安仁屋勲→中川謙二
自治警幹部→大木民夫
養成学校教官 搭部八郎/ナレーション→坂口芳貞

アニメには演出という担当部署がありまして、それでいくとアニメの監督の場合の評価は演出でなく、絵コンテがよいと思います、となりますがそれではおかしいので、アニメの監督は演出ということで書いています。
沖浦啓之監督の演出はよいと思います。作画出身の人に絵コンテが描けるのかい?と疑問がありましたが全然大丈夫でした。これは余計な心配をしてしまった。
始めのほうはセリフが聞き取りにくく、黒澤明監督作品並みの聞き取りにくさでしたが途中からマシになりました。よかった。
絶叫芝居はやめてほしかった。とはいえアニメでも実写でも絶叫芝居はつき物なのですからこまったものです。絶叫芝居は溝口健二監督くらいにしてほしいと思っています。

押井守作品のいつものことで原作脚本担当でも登場する人物関係のわかりにくさは相変わらずでお偉方は誰が誰だかどっちの組織なのか初見ではサッパリわかりません。

珍しくヒロインは押井守作品のタイプではありませんでした。これは新境地なのかもしれません。爆弾の運び役にはいつものヒロインは向いていないのもありますけど。

プロローグの市街地での暴動騒ぎで爆弾の運び役の女性は自爆して、それが気になる主人公の隊員は自爆した女性の身元を調べるのを公安の知人に頼みます。これは特に重要ではなく単なる人物紹介の流れのシーンでした。

自爆した女性が埋葬されている集合墓地のビルで自爆した女性にそっくりの赤い服の女性に会います。後でこの知り合った赤い服の女性は公安のオトリとネタばれがあります。これも本筋とは関係がなかったような。

赤頭巾の話しと平行して、実地シュミレーションの訓練のシーンが描写されています。
夢のシーンで狼の群れに食われる少女がありました。これは結局レッドへリングだったの?

特機隊はMG42マシンガンを使用。連射する時のマズルフラッシュが強烈です。サム・ペキンパー監督の『戦争のはらわた』(77年)のクライマックスでのPPSh41サブ・マシンガンのシーンに匹敵します。

ゲリラの武器はステン・マークIIのサブマシンガン等。ステンは一番安いサブマシンガンで有名なので資金には苦労していそうなゲリラにあっています。
何で現在の日本ではサブマシンガンは出回らないのかが不思議です。ヤクザも警察もいくらでも買えると思いますが。行政指導、自主規制なのかな。

クルマといえばベンツがちゃんと出ていました。ベンツは昔からあります。
フォルクスワーゲン・ビートルも出ていました。
赤いスポーツカーは何でしょう。この時代なら大藪春彦の小説『蘇る金狼』に登場して印象深かったトライアンフTR4がいいのですが。
松田優作主演の映画『蘇る金狼』(79年)ではトライアンフTR4ではなく当時ブームだったスーパーカーになっていたので、こんな成り金趣味のクルマではないよと心底がっかりしたものです。車種が違うのはしょうがないけどもう少し合ったクルマにしてくれと思いました。

VCのセレクトがしぶいです。これはいい。宮崎駿監督作品のVCのセレクトは何で?と思える俳優や素人ばかりで?がつくのでこの作品でのセレクトのよさが目立ちます。

実写で撮って1960年代の大映のキャストなら。これでピッタリです。
特機隊の伏一貴は背は低いけど市川雷蔵
同期で公安の辺見敦はユーモアは抑えめにして船越英二
雨宮圭はあまり上手くないので笠原玲子あたり?
お偉いさんはやっぱり中村鴈治郎あたりには出て欲しいものです。
このキャストで増村保造監督の『陸軍中野学校』(66年)風になればいいです。


この作品はアニメファンには受けが悪いでしょうね。何しろ酷評の切り札「アニメらしくない」がありますから。これですんでしまいます。
これを言われると返す言葉もない。『カムイの剣』(85年)『機動警察パトレイバー』(89年)は公開当時はこれだったような。


ところで、アニメは絵コンテで作品の出来が決まってしまうとのことです。押井守監督と絵コンテというよりレイアウトと称しているようですがこのへんの違いはよくわかりません。
ポイントは絵コンテ自体の絵が上手くなくてもいいのです。演出のことがスタッフにわかるように書かれていればいいのです。ちなみに押井守監督の絵コンテの絵は下手です。そのかわり演出に関する情報が絵ではなく文字でたっぷりと書き込まれています。


前説。
狼云々・・・
戦争があった。敗戦して・・・
首都警=ケルベロスが出来た。それで・・・

キノコ雲から話しは始まります。日本は戦争に負けたとなります。
時代設定は昭和30年代と思われる別の世界、多次元宇宙のもう一つの日本が舞台のようです。時代考証は完璧というか上手く組み合わせているような感じがしました。アニメは見える範囲内のディテールまで完全にデザイン出来るメリットがあります。カネと時間と知識があればの話しですが。
時代考証というより多次元宇宙のもう一つの日本の姿のようです。

タイトル。
騒乱です。
投石です。→現在では歩道の敷石が無くなったので出来ません。
火炎瓶です。→現在ではペットボトルになったの出来ません。
懐かしの火炎瓶に催涙弾のシーンがあります。現在ならそれでもペットボトル爆弾なんて出来そうな感じ。投げて落ちても割れないので起爆をどうするかが問題ですが。→携帯電話を起爆装置にしてリモコン爆弾が出来そうな感じがしますけど。

少女が歩く。バッグを運ぶ。
バッグは強力爆弾でした。渡された男が投じ大爆発となります。
当局側は催涙弾を撃ちまくる。

下水道にて。この世界は下水道完備となっています。
ゲリラを一掃する首都警。
自爆する少女。

首都警本部にて。
幹部4人で長い話となっています。
人狼とは?と伏線が入る。

少女自爆に居合わせた特機隊の伏一貴が審問されます。
これは吊るし上げともいう。
結局、再訓練となる伏一貴。

特機隊訓練所にて。
訓練のモンタージュとなります。

外出する伏一貴。
都電とバスが混走している世界です。現実的というか合理的です。
黄色に赤い線の都バスが走っていました。このデザインは実際に走っていました。悪くはないと思ったけどあっというまになくなってしまった。現在は広告カラーの都バスが走っています。都バスと無意識に認識出来る黄色い方がまだよかったと思います。

博物館にて。
知人の同期で公安の辺見敦と会う伏一貴。
資料を貰います。
辺見敦の話しは長い。

共同墓地にて。
墓はアパート式になっています。スペース効率が良過ぎるような。
自爆して死んだ少女=阿川七生にそっくり少女がいます。
阿川七生の姉と称する雨宮圭です。

隅田川の川べりにて。何故か人工中洲があります。
伏一貴と雨宮圭。
阿川七生が残した本を渡されます。

特機隊訓練所にて。
実地シュミレーションの訓練となります。
ノクトビジョン。
ペイント弾ではなく模擬弾。
平行して貰った本『赤ずきん』の朗読が入ります。

訓練が終わったら長い説教となります。
辺見敦がやってきて上司 特機隊副長 半田元と話し込みます。

外出する伏一貴。
雨宮圭と会います。
公園にて。
デパート屋上にて。
ここからフラッシュバックで下水道へと。狼がたくさん出てきて少女を食い殺します。これは夢でした。
こんな感じで話しやシーンが飛んでいます。

デパート屋上のシーンはサミュエル・フラー監督の国辱映画として有名な『東京暗黒街 竹の家』(55年)のロケシーンとよく似ていました。
『東京暗黒街 竹の家』は当時の日本の風景や風俗をカラーで日本人なら無意識にカットしたくなるとこでもカットせずにありのままに撮ってある資料としては貴重な作品です。ですがセットになるとハリウッドでは毎度の対日本デタラメ考証になるのはご愛嬌となります。

雨宮圭のアパートにて。
電話が入ります。黒電話。

街のモンタージュ。
伏一貴と雨宮圭。
ここでは何故か少年が被っている南海ホークスの帽子が目立ちます。帽子の色がグリーンだったのがだいぶ後になってから知ったものです。

雨です。雨宿りの伏一貴と雨宮圭。

スクラップ置き場にて。
クルマ数台があります。
警察関係の幹部4人が話し込みます。
辺見敦は離れたとこで待機しています。
よくわからん話しです。組織合併の話しのようです。

室戸文明と辺見敦。雨宮圭の話しが出ます。
スキャンダルを起こして首都警を解散させようとしているらしい。
人狼の話しも出ています。
辺見敦のクルマ後席にはその雨宮圭がいます。

首都警幹部2人の会話。
どうやらこれには気がついているような。

博物館にて。
伏一貴と雨宮圭。

特機隊訓練所にて。
モーゼルミリタリーで射撃訓練の伏一貴。
辺見敦がいます。それとなく警告をしているような。

夜、雨宮圭から電話が入る。
無断で外出する伏一貴。

博物館にて。
公安関係の待ち伏せがあります。
裏をかいて暴発騒ぎをおこす伏一貴。
真相を話す雨宮圭。
博物館から逃走する伏一貴と雨宮圭。

公安関係の装備。
サブマシンガンはシュマイザーMP-38。
クルマはワーゲン・ビートル。

ワーゲン・ビートルを奪って逃走する伏一貴と雨宮圭。

公安にて。
逃げたと報告を聞く室戸文明と辺見敦。
後始末は私がしますと威勢がいい辺見敦です。
手下を連れて出動するようです。

クルマを捨てて公衆電話を使ってる伏一貴。
行くとこがないので逃げない雨宮圭。

都電で移動の伏一貴と雨宮圭。
繁華街にて。幸せそうな酔っ払いがうようよいます。
徒歩で移動の雨宮圭。

デパートに侵入する伏一貴と雨宮圭。
屋上へ向かいます。
事情を話す雨宮圭。
キスシーンもあったのか。

下水道に入る伏一貴と雨宮圭。
普通の人が4人ほど登場。続けて特機隊副長 半田元が来ます。
どうやら人狼のメンバーらしい。
この普通の人が集まって普通の持ち物から武器を出して武装するシーンがいいです。これの元ネタはどこなのかなと興味深い。ジェームズ・グリッケンハウス監督のご都合主義アクション『ザ・ソルジャー』(82年)ではないと思いますが。

地上では辺見敦一行が到着する。

特機隊副長 半田元が真相を話します。
雨宮圭のバッグにはトランスミッターがあった。
装備を付ける伏一貴、配置に付く4人。

下水道に入った辺見敦一行はどうも分が悪い。
次々と片づけられていきます。

エピローグ。
スクラップ置き場にて。
雨宮圭を撃ったような伏一貴。私はそう見えました。
エンドとなります。

結構面白かった。作画だけが凝っている退屈な作品かと思っていたので意外でした。
そんなわけで結構な出来のよい作品でした。



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