『口紅殺人事件』(1956年)
この作品はフリッツ・ラング監督のサスペンスと思ったら、そうでない話しだったりします。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1956年 RKOラジオ・ピクチャーズ アメリカ作品
スカイパ−フェクTV260シネフィルイマジカにて。画質 それなりに悪い。最初にターナー・エンタテインメントのタイトルが入っていますがこれは余計です。
プロット 連続殺人事件と出世競争がないまぜになる話しのようです。
音楽 ハーツェル・バーク・ギルバート
キャスト
ダナ・アンドリュース 敏腕記者のモブリー
サリー・フォレスト 秘書のナンシー
ロンダ・フレミング オーナーの息子夫人のドロシー
アイダ・ルピノ 記者のミルドレッド
ジョージ・サンダース 配信部長のラヴィング
トマス・ミッチェル 編集長のグリフィス
ジェームズ・クレイグ 写真部長のクライツァー
ビンセント・プライス オーナーのどら息子ウォルター・カイン
ロバート・ワーウィック オーナーのエイモス・カイン
ラルフ・ピータース 記者のミード
ハワード・ダフ カウフマン警部補
ブラディミール・ソロコフ 容疑者のアパートの管理人ピルスキー
ジョン・バリモアJr. 犯人のロバート
フリッツ・ラング監督の演出はよいと思います。
キャストの方々は豪華ですが何となく全盛期を少し過ぎた人ばかりと思えてしまいます。渋いので、まあいいけど。
秘書のナンシーを演じるサリー・フォレストは実質ヒロインの筈ですがイマイチ魅力薄でした。これはマイナスでした。
N.Y.の夜から話しは始まります。
雑貨店からの届け物を受け取ったジュディスという女性が殺されるとこで悲鳴があってタイトルとなります。鏡に口紅で「母親に聞け」とメッセージが残されます。出だしは強烈で快調といったとこです。
マット画で高層ビルが映し出されてカイン通信社、N.Y.センチネルとネオンが光っています。
オーナーのエイモス・カインは病身ですが張り切って通信社幹部を集めて激を飛ばします。この殺人事件を大きく報道しろとなります。
ダナ・アンドリュース扮する敏腕記者のモブリーは会社が自ら提供するニュース番組のキャスターも務めています。会社の内部にスタジオがあってそこから生中継していますというよりビデオがない当時のTV放送では生中継しか出来なかったはずです。
オーナーのエイモス・カインは急に亡くなります。高層ビルのカイン通信社のネオンが消える描写が入ります。これは古きよきサイレント調のモンタージュでいいです。
ビンセント・プライス扮するオーナーのどら息子ウォルター・カインがやって来てまた幹部3人を集めて手柄をたてたら専務にしてやると競争をさせます。
ジョージ・サンダース扮する配信部長のラヴィング
トマス・ミッチェル扮する編集長のグリフィス
ジェームズ・クレイグ扮する写真部長のクライツァー
の3人です。別に後で呼ばれたモブリー記者が参考意見を求められます。出世には興味ないと答えるモブリー記者です。
そんな感じでサスペンスかと思っていたらサラリーマン物のようです。犯人捜しより出世競争に重点が置かれているようです。変な話しです。
秘書のナンシーのアパートに来るモブリー記者。
ボタン式のドアのロックを外すテストをやっています。これはプロローグで犯人がアパートに侵入した手口なのです。なんやかんやでナンシーにプロボーズするモブリー記者。ここは古きよきハリウッド調です。
容疑者が捕まったと聞いて警察に行くモブリー記者。
知り合いのカウフマン警部補と話すモブリー記者。2人で犯人像を推理します。マザコンの若い男だろうとなります。
記者は個別に取材しています。記者クラブ制で取材統制されている日本では見られない珍しい光景だと思われます。
モブリー記者はTV放送でこの口紅殺人事件の犯人に直接呼びかけて挑発します。恋人のナンシーをおとりに使うとしています。ホントかよとなります。
犯人はいつのまにかナンシーのアパートに来ていたりします。
モブリー記者はやり手のミルドレッド記者と飲んでいます。ミルドレッド記者はイブニングドレス姿です。
そこに犯人がやって来たりします。この犯人の服装は帽子に黒の革ジャンにパンツです。当時最新の流行の『乱暴者』(53年)のマーロン・ブランド・ルックといったとこです。
ナンシーのアパートに侵入しようとする犯人ですが失敗して、偶然に逢い引き用の部屋に入ろうしたオーナーの息子夫人のドロシーを襲いますが抵抗されて逃亡します。
地下鉄に逃げて格闘したりしますが地上に出たとこで捕まります。ここで犯人はこの作品から退場となります。どんな描写バランスなのだとなります。
肝心の出世レースの方は夫人と通じていた穴馬の写真部長のクライツァーとなります。
どら息子社長に意見して辞めるモブリー記者。
モブリー記者とナンシーとハネムーンに来たホテルの部屋であれからカイン通信社の人事状況が変わったと知ったとこでエンドとなります。やっぱりサラリーマン物です。
アイダ・ルピノはどこに出ているの?と見ていたらようやく記者のミルドレッドとわかりました。低めのいい声をしています。最初は配信部長のラヴィングの夫人なのかと思っていたら記者なのですね。色仕掛けが得意の記者のようです。
ビンセント・プライスはオーナーのどら息子役がハマっています。こういう役が得意のようです。
意外と普通の映画でした。正直言ってキャリア終盤のラング監督のそれなりの出来のようでした。どんなに優秀な監督でもキャリア後半は緩やかに下り坂となっていくようです。
そんなわけでサスペンスだと思ったらサラリーマン物な作品でした。珍品といってもいいような感じです。
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