『沈黙の世界』(1956年)
この作品は海洋学者ジャック=イヴ・クストーの有名な海洋ドキュメンタリーのようです。共同監督がルイ・マル。
なおこの文はネタバレ全開となっています。ドキュメンタリーにネタバレがあるのか?そういう疑問も出てきます。
1956年 フランス=イタリア作品
ランニング・タイム◆82分
原題◆Le Monde du silence
英題◆The Silent World
プロット◆海を潜って調査する話しのようです。
音楽◆Yves Baudrier イヴ・ボードリエ
ビーム エンタテインメント発売のDVDにて。画質はそれなりです。スクイーズ収録のフル表示。画面サイズはスタンダード。左右に黒味あり。
キャスト
よくわからん。本人達です。
ジャック=イヴ・クストーとルイ・マル監督の演出?はよいと思います。ドキュメンタリーに演出はあるのか?あるんでしょうね。
ルイ・マル監督は演出?と水中撮影を協力しているとのことです。
1956年当時でカラーで水中撮影とは、これだけでも充分見物になると思えます。水中撮影の時間は非常に短かったそうで細切れで撮ったショットを編集で何とかしたんだと思えます。こういうのが映画的でいいです。
効果音は後付けでしょう。これが文字通り効果的なのです。アクションに効果音を付けると付けないとでは大違いとなります。
後から相当手が入っていてこれをドキュメンタリーと言えるのかという問題もありますけど。
最初のシーンでは水深50mで撮影用ライトにカメラ。7人がかりで撮っていました。大変そうです。
いきなり始ってる。
水中用松明を持って潜るダイバー達。
タイトル。
海洋調査船カリプソ号は海を行く。
12人のダイバーが科学的な調査を行う。隊員はやせてる人が多いようです。太っている人もいますけど。
調査船の船底に出入り口があってそこから海に潜るとこがありました。
これは秘密基地のようでいいです。よく考えると別にそうしなくてもいいと思えますがいいものです。
海綿採りの漁師は旧式の潜水服を着てホースにつながれて海に潜るとなっています。
アクアラングの優位性を誇っています。漁師は1日に10回は潜るとのこと。
海綿のことをスポンジと称しています。なるほど。アニメの『スポンジ・ボブ』はそのものことをいっているんだとようやくわかりました。
調査船の人達はアクアラングを使用。アクアラングは1941年にジャック=イヴ・クストーが発明したそうです。
アクアラングの優位性を誇示していますが、スポンジダイバーの手伝いをやっています。ホースにつながれたスポンジダイバーをバカにしてるわけではなく一応敬意を払ってるらしい。
減圧タンクでお笑いの一席となっています。
海に潜って窒素酔いしたら減圧タンクで治すとのことです。このやりとりがセリフ回しがぎこちなくてやらせっぽくて逆にいいです。せっかくエビを獲った隊員が減圧タンクに入れられて食べられないとギャグが入ります。
窒素酔いは水深50mから一気に上がるとそうなるの?
イルカのジャンプ大会となります。
イルカの大群と競争する海洋調査船カリプソ号。
イルカは船より速く泳げるようです。海面からジャンプするイルカ達。ジャンプする理由は?外敵から身を守るため?それとも単なるスポーツなの?と興味深い。ジャンプの上手いイルカもいるし下手なのもいます。そんな感じでちゃんとジャンプせんかいと突っ込みたくなるイルカがいたりします。
調査の一環で海底に向かって信号音を送る。
音響反射装置で調査するカリプソ号。
海中には散乱層というものがあるそうです。音響反射装置によってわかるとのこと。自動カメラ(スティルカメラです。)を使って海底を撮ることもやってた。結局なんの調査だった?
採水器の作動が面白い。
採水器が目的深度に達したら吊ってるケーブルに重りをつけて落とします。
重りが採水器にぶつかると弁が開いて採水するわけです。機械的でシンプルな動作になっています。
アクアラングで75mを潜っています。
60mから75mへと潜りサンゴ礁を調査します。クマノミがいます。
教科書にも載っている有名なイソギンチャクとクマノミの共生を紹介しています。
ナマコを採取して船の甲板で中味を出しています。ナマコに共生してるサカナが出てきます。
それにしてもよくナマコを素手で持てるな。
ダイナマイトでサカナを一網打尽にするシーンになります。
サカナの全数検査のために仕方なくやるとのことです。ホントか?
それにしても凄いことをやっています。
水中スクーターを使う図。
主観ショットを使いまくりです。スピード感があってこれはいいです。
水中スクーターのスイッチはどこにある?、アームにレバータイプのスイッチがあってケーブルにつながってるようです。
この人達はウェットスーツを着ないで海水パンツにアクアラング装備でサンゴすれすれに水中スクーターをすっ飛ばします。サンゴに触れてケガをしないのかと見てる方が心配になります。
ウミガメにつかまって泳がせるとこがあります。ウミガメはかなり嫌がっているようです。
難破船の捜索となります。
小型ボートを降ろして調査に向かいます。
ゴムボートではなくて木製ボートです。ランチと言ってた。
目印のドラム缶にはBP=British Petroleumのマークがあります。フランスだからelfなのかと思ったらそうではなかった。
で、ようやく見つけます。
1941年に沈没した船をレーダーを使って探します。だいたいの位置がわかったら船首の水中観測室から有視界でホントに船がどうか調査します。沈没船の中を動き回ります。これだけで見てて面白い。
沈没船の鐘に付いたサンゴ等を落として船名を確認します。「・・・グラスゴー」と船名が女性の声で入ってきます。いいじゃん。センスがいい。ここはルイ・マル監督が演出したのでしょう。
当然とはいえこの船には女っ気が全くありません。
インド洋の季節風で悪天候の時もあります。
船首に海パンでしがみついてる人がいます。無茶しています。
で、お腹を上にして全く動かないイヌ、船が揺れるときだけイスの上でズリズリと動きます。これは死んでいるイヌだなとなりますが実は寝ているだけでした。イヌは胴長短足のダックスフントです。この作品の効果で飼いたい人が増えてさぞ売れたでしょう。
飛び魚をフライパンに集めてるいるシーンが入ります。
トビウオが灯につられて船の甲板に飛んできます。トビウオは食料となります。この描写は定番でいいです。
インド洋にて。クジラを探しています。見つけて接近します。
マッコウクジラの群れに出会う海洋調査船カリプソ号。
マッコウクジラは一気に800m潜れるそうです。成体が27m。子供のクジラが6mとなっていました。
子クジラがカリプソ号のスクリューに接触して死に至ります。
この事故について自分らが悪いとは思わないとこがフランス人らしい。
最初はぶつかっただけというのは別のクジラだったのかな。
死んだ子クジラに30頭あまりのサメが群がり食われます。サメは身体を震わせて咬みきります。歯をノコギリのように使っているということですか。なるほど理にかなっている。
カリプソ号の人達はサメ退治となります。今更と思えますがやりたいのでしょう。甲板に引き上げて斧の背で叩き殺します。
これがこの作品のメインエピソードのようです。
暑い日。甲板で隊員がチェロを弾くとこがあります。
陸をというか島を発見します。木製ランチに大勢乗って上陸します。
で、ゾウガメと遭遇して乗っかるわけです。ゾウガメは思い切り嫌がっています。
カメを見ると乗りたがる人達です。ウミガメでもリクガメでも乗りたがります。どういう人達なんだ。
鳥もいます。餌付けをしている。
ウミガメの卵採りの現地人と遭遇しています。サーと返事してる現地人。
この島では夜になるとウミガメが産卵しにやってきます。
ウミガメの交尾シーンなんてあったのか?初めて見たような気がする。
で、産卵のシーンとなります。
撮影用のライトがまぶしそうなウミガメです。卵を埋めます。この卵が孵って子ガメが海に向かうところ等、このシーンはガキの頃にTV放映で見たことがあります。この作品なのかはわかりませんが。ナレーションは久米明に決まっています。
あるサンゴ礁の最初の訪問者となる海洋調査船カリプソ号。
何故かフグとオオアジがぴったりとくっついて泳いでいます。理由は不明とのこと。
で、問題の餌付けのシーンとなります。
現在ではサカナに限らず野生の動物に餌付けはダメとなっているようです。
ハタと遭遇していじくってネタにしています。
36キロあるハタを餌付けします。ハタは撮影用ライトに囲まれてスターとなっています。エサにつられているだけのようですけど。
サンゴ礁を去る海洋調査船カリプソ号。
そしてまだまだ調査は続くとエンドになります。
この作品はガキの頃にTV放映で見たことがあるような気もします。細切れでTV放映されていたのかもしれません。こういうのを初めて見ればビックリするでしょう。今はTVでもやりません。
そんなわけで有名なだけはあるよい作品でした。
当時は誰も見たことがない映像が満載となっていて、なるほどこの作品が全世界でヒットしたのも頷けます。誰もやったことがないドキュメンタリーを撮るのがフランス人のようです。
いまだ見たことのない映像らしい渡り鳥の生態ドキュメンタリー『WATARIDORI』(2001年)もこの伝統を受け継いでいるようです。
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