『エビータ』(1996年)
この作品はアンドリュー・ロイド=ウェーバー原作?でアラン・パーカー監督のミュージカルです。アンドリュー・ロイド=ウェーバーはお気に入りではないようですが。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1996年 シナジー・ピクチャーズ・エンタテインメント/パラマウント アメリカ作品
プロット ある女性の一代で成り上がるわかりやすい物語のようです。
音楽 歌詞はティム・ライス、作曲はアンドリュー・ロイド=ウェーバー。
キャスト
マドンナ→成り上がりのエビータことエバ・デュアルテ
アントニオ・バンデラス→時空を越えた説明進行役
ジョナサン・プライス→ホアン・ペロン大佐/大統領
ジミー・ネイル→タンゴ歌手のマガルディ
アンドレア・コアー→ホアン・ペロンの前愛人
アラン・パーカー監督の演出はよいと思います。
脚本はアラン・パーカーと何かと評判のよくないオリバー・ストーンななの思わず引いてしまいました。で、始まりましたらエバ・ペロンはすでに死亡してて回想になっていました。
だいぶ脚色されているようですがアルゼンチンの歴史の勉強になる?ならないか。
アルゼンチンといったらタンゴとサッカーぐらいしか思いつかない。
ミュージカルナンバーは素晴らしく見て聞いているだけでいいものでした。この作品にはミュージカル映画に付き物な退屈な本編がなくて全編歌のみミュージカルシーンだけになっています。
音楽にシンクロしたカット割りが素晴らしくこれが全編に渡って続いているのですからたいしたものです。スローなナンバーが多くなる後半は少しだれますがこのドライブ感は凄いものです。
エビータの話しとかマドンナの歌ではなくて、アントニオ・バンデラスの歌と音楽にシンクロしたカット割りが素晴らしいのです。
最初のナンバーはアントニオ・バンデラスから始まるとこがいいです。バンデラスは時と立場を越えた説明進行役でした。なるほどこれなら見てて納得出来ます。狂言回しともいいますか。
前半にピークがあって後は惰性という感じがしないでもなかった。
葬式の最中にあっさりと後タイトルとなりこれで終わりなの?となります。ちょんぎってあるのかと思ってしまいました。
後タイトルから、アルゼンチンでロケをしたのはわかりますがハンガリーで何でロケしたの?古い街並みなのかな。
タイトルでは音声のみで、プロローグに少し映像が出ている劇中映画はこの作品のためのオリジナルのような感じがします。画面が妙にきれいなのがそんな感じです。
ブエノスアイレス 1952年。映画館にて。
映画は中断されて支配人がエバ・ペロンの死亡を発表します。騒然とする場内です。客の中にアントニオ・バンデラス扮する男がいます。バンデラスの歌がいい。
回想になります。チビルマイ 1926
父親の葬式に参列出来ないエバの一家。
ブエノスアイレス 1952年に戻ってエバ・ペロンの葬式になります。
1926年と1952年がカットバックされます。
フニン 1936
ジミー・ネイル扮するタンゴ歌手のマガルディが巡業中。
マガルディのベッドの相手を務めるマドンナ扮するエバが登場。
一悶着ありますすがマガルディに付いて村を出るエバ。
汽車でブエノスアイレスへと。ブエノスアイレスのことはをビッグアップルなんてとホントに言うの?初めて知ったぞ。
バーで踊るエバ。バーテンにアントニオ・バンデラスがいます。
妻子のいるマガルディとはお別れとなり、ホステス稼業となるエバ。
男を利用して出世するエバ、モンタージュのシーン。
オーディション通いのエバ。
カメラマンに気に入られてグラビアデビューとなります。
すぐに違うカメラマンに乗り換えるエバ。
次々と男を乗り換えてのし上がるエバです。このナンバーが傑作。
マドンナ本人そのまんまというかエビータとキャラがかぶっているのがポイントのようです。
出世の手始めはカメラマンからで次々と男を変えて成り上がって行きます。男を捨てる時の決めのセリフと言うか歌で「恋の終わり・・」と称しています。ここを状況説明するアントニオ・バンデラスの歌がいいのです。
男を踏み台にしていることを自覚していなくて本気で「恋の終わり・・」と思い込んでいるようです。この方が怖い。
1943年6月のクーデター。
このナンバーも傑作です。音楽とシンクロしたカット割りが気持ちいい。
ジョナサン・プライス扮するホアン・ペロン大佐が登場。見事にハマっているキャスティングです。
1944年1月のホアン・ペロン大佐主催慈善コンサートでタンゴ歌手のマガルディと再会するエバ。もう何でもない関係となっています。
ホアン・ペロン大佐に近づくエバ。
「厚かましい女ではないの」のセリフ。よく言うねと感心しました。
セリフはなくて歌っているだけのがいい。セリフは全くないと同じようなもので一言だけ名前を言うとこがあったくらいです。
さっそくベッドに直行となります。
その前にホアン・ペロン大佐の若い愛人を追い出します。
マドンナ対コアーズのボーカルの対決となっています。
ポロが競技中のシーンから上流階級の描写。
上流階級からは嫌われているエバ。軍隊からは嫌われているエバ。
ラジオが当時の最先端メディアとなっています。
このナンバーも傑作です。音楽とシンクロしたカット割りが気持ちいい。
新しいアルゼンチンの描写。
ホアン・ペロン大佐の上着を脱ぐパフォーマンス。
このナンバーもいいです。
アルゼンチンを讚えるエバ=エビータ。
このナンバーはハイライトシーンでよく出てきます。私的にはそれほどでもない。
ヨーロッパ・ツアーをするエバ。レインボー・ツアーは1950年に敢行。
そのニュースフィルムを見ながら成功だ失敗だと何だかんだと歌うのがいい。これは傑作なナンバーです。
続いて、おとぎ話は終わりのナンバー。
エバのカネの流れのナンバー。
貧乏人は誰でも幸せになれるわけではなくくじ引きとなっています。
鉄道ストライキがおこります。
新聞社に当局の手入れが入り暴徒が乱入します。
暴動と教会のエバのカットバック。
教会で倒れるエバ。結局死因は何でしたか?見ててわからなかった。
この手の人達はいつまでたっても満足出来ないこと、自分の肉体的衰えは避けられないこと。この2点が弱点だと思われます。精神的な衰えは感じることが出来ないと思える。感じないふりをする?
幻想の中でバンデラスとダンスのエバ。アルゼンチンなのでタンゴを踊るシーンがあります。マドンナことですがタンゴぐらいちゃんと踊らんかいと突っ込みたくなります。
病状が悪化するエバ。
バルコニーから民衆にあいさつをするエバ。
民衆の祈りのシーン。
この辺は正直言って平板な感じです。
プロローグのエバの盛大な葬式に戻り、バンデラスが歌い何となくエンドとなります。エビータは26歳で大統領夫人となり何歳で死んだ?→33歳で死んだそうです。
エビータを演じるマドンナのキャスティングはハマっています。子役の頃からあざといとこも妙にハマっています。
正直言って大根で歌のみにしたのは正解でした。さすがに歌っているとこだけはサマになっています。
アントニオ・バンデラスは自分で歌っている?そうならたいしたものです。この歌が最高です。何故か映画だと男の歌もいいのが不思議なとこです。
背が高くないのでウエイター姿が妙にハマって見えます。時空を越えたキャラなので至るとこに登場します。他にはバーテン、慈善コンサートの司会、新聞記者、アパートの管理人、民衆の中の名も無い男、映写技師、そして葬式での参列者。
アントニオ・バンデラスがメラニー・グリフィスにしたのは性格がいいから?老け具合は同じくらいだからそうなるのかな。
ホアン・ペロン大佐/大統領を演じるジョナサン・プライスは神妙にマドンナの相手役を務めていました。ホアン・ペロンは上着を脱ぐのが得意のパフォーマンスのようです。
ジョナサン・プライスはテリー・ギリアム監督作品の常連で最近はジョン・フランケンハイマー監督の『RONIN』(98年)では悪役を務めていたプライスが神妙にしてて悪役ではないのがどうもなじめないような。歌はプライス自身で歌っているの?それならたいしたものです。
ザ・コアーズのボーカルのアンドレア・コアーが出ているらしいのでどこに出ているのかと注目していたらエビータに追い出されるホアン・ペロンの前愛人役で1シーンのみ登場。申し訳程度に歌みたいなセリフがありました。追い出す時にはマドンナはアンドレア・コアーのことを本気でどついていたような気がする。
アンドレア・コアーはアラン・パーカー監督とコネがあったのですか。The Commitments『ザ・コミットメンツ』(91年)のオーディションを受けて出演したことがあるようです。
この作品で1番いいのは実生活でアントニオ・バンデラスがマドンナを振ったことで、そのバンデラスが時と立場を越えた説明進行役を演じる。これでこの作品のバランスがとれています。アントニオ・バンデラスがメラニー・グリフィスにしたのは性格がいいから?老け具合は同じくらいだからそうなるのかな。
アンドリュー・ロイド=ウェーバーはこの作品を気に入っていないとのことです。下品な成り上がりボップシンガーのマドンナに、英語を覚えたばかりの濃いスペイン人のバンデラスのキャストも気に入らないのでしょう。
アンドリュー・ロイド=ウェーバーにしてみればおそらくアラン・パーカー監督作品に仕上がってるのも気に入らないのでしょう。
オペラには全く興味がない私にはポップな感じでいいんじゃないとなります。
見る前はマドンナが1人だけ気持ちよくなって歌ってるだけかとの思っていましたが実際に見れば違いました。ミュージカルナンバーは素晴らしく見て聞いているだけでいいものでした。音楽にシンクロしたカット割りが素晴らしい。
そんなわけでこれは傑作。音楽とシンクロしたカット割りが全編に渡り見れます。見てて飽きません。全体的にポップな歌がいいです。
全編セリフ無しで歌のみのミュージカルは好きです。最初にこのスタイルの作品を見たのがケン・ラッセル監督の『トミー』(75年)で、こんな手法があるかと感心しましたものです。
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