『地球の静止する日』(1951年)
この作品はロバート・ワイズ監督の未確認飛行物体の接近遭遇SFです。この手の作品のオリジナルとなっています。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1951年 20世紀フォックス アメリカ作品
ランニング・タイム◆92分
原題◆The Day the Earth Stood Still
プロット◆警告を与えに宇宙人が来訪する話しのようです。
音楽◆バーナード・ハーマン これが素晴らしいスコアとなっています。
20世紀フォックス発売のDVDにて。画質は非常によいです。
キャスト
マイケル・レニー→宇宙から使者クラトゥ
パトリシア・ニール→子持ちの秘書ベンソン夫人
ビリー・グレイ→息子のボビー
サム・ジャフェ→バーンハート教授
ヒュー・マーロウ→ベンソン夫人の恋人トム・スティーブンス
ロバート・ワイズ監督の演出はよいと思います。
原子力を使う兆候がみられると使者がやってくる設定になってました。これがオリジナルならたいしたものです。ルーティンな設定ですから。
一応メロドラマも入れてます。嫉妬に狂った男がクラトゥを密告したりしてます。これはホントに脚本が凝ってるみたいです。とりあえず何でも詰め込んだようです。
タイトルにて。
音楽はバーナード・ハーマンです。これは実によいスコアで画面によく合っている。テルミンが鳴り響きます。
タイトルバックは宇宙から地球に接近する主観ショットになっています。
軍のレーダーから未確認飛行物体が接近遭遇となります。
各国のラジオをこれを伝えます。カルカッタ、BBC他色々。ラジオで各国モンタージュの図。これは『空の大怪獣ラドン』(1956年)ではそのまま引用しています。
光る円盤は早速ワシントンD.C.の草野球グラウンドに着陸します。話しが早くてよいです。
警察や軍隊が出動となるモンタージュ。
戦車出動でコーナーを回るのにパワースライドで曲がります。これはいいショットです。TVでは臨時ニュースが流れます。
そんなこんなでドキュメンタリー・タッチの演出になっています。
着陸した円盤の周りは軍隊が囲みます。その外側はやじ馬であふれています。
円盤の入り口が開いて宇宙人が現れます。
その宇宙人が持っている物がいきなり妙な動きを見せたので過剰反応した兵隊が反射的にハンドガンを発砲してしまいます。宇宙人は負傷となります。これは不可抗力でしょう。
正体不明なロボットが現れます。眼から光線で銃や戦車、155mm砲を跡形もなく溶かしてしまいます。
そのまま地球の病院送りとなる宇宙人。
病院にて。
大統領補佐官のハーリーが登場。宇宙人と交渉となります。
宇宙人クラトゥはラジオで英語を覚えたと称してます。これでつじつまが合う?
冷戦には関心がない宇宙人クラトゥは地球の存亡がかかっていると話します。
病院にて。次の日です。
クラトゥのケガははもう治っています。
アメリカだけでは交渉の席にはつかないとクラトゥ。交渉は決裂となります。
そんなことから病院から消え失せるクラトゥ。関係者は大騒ぎとなります。報道もされます。モンタージュになっています。アメリカでは何でもFrom Mar'sとしてる。宇宙人の代名詞のようです。Space Shipとも載ってる。
宇宙人のクラトゥはスーツ姿でかばんを下げて街を歩きます。普通の人になって下宿屋に入ります。下宿屋なんてアメリカにもあるんだ。
最初は影だけのクラトゥ。登場の仕方は少し不気味となっています。
下宿で食事中の図。
ベンソン夫人は知り合いのトムとデートに行きます。
息子のボビーの面倒はクラトゥが街を案内してくれということになります。
街を見物するクラトゥ。
案内のボビーはN.Y.ヤンキースの帽子を被っています。
アーリントンナショナルセメタリーで何故かスクリーンプロセス使用。
ジョージ・ワシントンの像。それから円盤を見に行きます。
円盤前ではTVレポーターのインタビューで談話を聞きにクラトゥのところにやって来ますが変わったことを言うクラトゥを途中で無視して次に行っています。TV屋はしょうもない。
ボビーから聞いてバーンハート教授に会いに行くクラトゥ。
教授は留守です。勝手に入り込んで黒板の数式を直すクラトゥ。数学の程度が文化の程度を表わすという説があるそうです。これに従った設定なのかもか。
帰宅していたクラトゥにバーンハート教授からの迎えが来ます。
バーンハート教授に会うクラトゥ。正体を明かし交渉します。
原爆には脅威を感じているクラトゥ。何かデモンストレーションをやればいいとバーンハート教授。明後日にやりましょうとクラトゥ。あまり後先のことを考えていないようです。
下宿に戻るクラトゥ。
ボビーに懐中電灯を借りたクラトゥは出かけます。後をつけるボビー。
クラトゥは円盤に行きます。見ているボビー。子役の出来はいいと思う。この円盤に入るとこを見て秘密を知ってしまう図はいいです。この作品をガキの頃見てたら感情移入したでしょう。
円盤の周りは塀で囲ってあります。円盤の姿が見えるのは映画だからでしょう。
日本式なら青いシートで全部囲ってしまうでしょう。
懐中電灯でゴートに信号を送るクラトゥ。見張り2人を殺さずに片づけます。
円盤内に入るクラトゥ。どうやらデモンストレーションの準備をしているようです。
帰宅してママのベンソン夫人にこのことを話すボビー。もちろん信じません。
居合わせたトムがクラトゥの部屋のダイヤを見つけます。と色々と描写が入ります。
仕事中のベンソン夫人。
クラトゥが会いに来ます。2人だけでエレベーターに乗ったとこで12:00となってデモンストレーションが始まります。
地球上の電気が30分使えなくなるデモンストレーションです。
電力が停止した各国のモンタージュとなります。この各国首都の模様はホトンドそのまま東宝特撮に引用されてると思います。
軍の会議で電気停止では例外もあって「病院や飛行中の飛行機は停止しなかった」と万全のアフターケアをセリフ1つで片付けています。これは脚本がよいということなのでしょう。
エレベーターに30分2人だけになったとこで自分の正体を明かして事情説明をすることになっています。無駄がない。
軍の会議でクラトゥは危険なので殺しても構わないと決まります。
ベンソン夫人が止めるのを構わずに嫉妬と金銭欲と名誉欲にかられたトムが当局にタレコミの電話をかけてしまいます。
ベンソン夫人はクラトゥとタクシーで移動中。科学者の集会に向かいます。
軍は包囲網を引きます。タクシーはたちまち感づかれて見張りの連絡が入ります。
タクシー内でクラトゥは自分にもしものことがあったらゴートにこの言葉「クラトウ、ベラタ、ニクト」を伝えてくれとベンソン夫人に頼みます。
クラトゥは撃たれます。ベンソン夫人は地下鉄で円盤の元に向かいます。
円盤の場所にて。
椅子が並べてあるのはここが科学者の集会場所だからのようです。
ゴートは活動を再開します。固められていた樹脂だかを溶かし始めます。
見張り2人を光線で溶かしてしまいます。もちろん命はない。
ベンソン夫人が到着して何とか伝言を伝えます。
ゴートは夫人を抱えて円盤内に入り夫人を残してクラトゥの身体を回収に出かけます。あっという間に回収して円盤に戻ってきます。仕事が早い。
円盤内でクラトゥ回復作業にかかります。
円盤外では科学者達が集まっています。
軍が科学者達に解散を命じバーンハート教授が解散の挨拶をしているとこに円盤の入り口が開いてクラトゥらが出てきて地球というかアメリカにメッセージを伝えます。
平和か滅亡かを選択せよとなり、選択の余地はありません。で、クラトゥは地球を去りエンドとなります。
この結末には何となく割り切れない感じがしないでもない。まあいいけど。
ロバート・ワイズ監督は腕前はいいので地球に来たばかりのクラトゥが街の様子は知ってる知らないの描写バランスはいいと思う。入院して2日。抜け出して下宿して見物してで2日。日数はあまりたっていません。
マイケル・レニーはこの作品のみで有名な人です。それもいいじゃないとなります。代表作が無いよりはいいと思います。
パトリシア・ニールはこんな声をしていたのか。可愛い声ではなくハスキーでもない、何か妙な声でした。
この人はゲーリー・クーパーとの特別な関係で有名です。
ゴートと1対1で対峙するとこはいい。ここがボンクラな監督だとギャラリーが一杯いる中でキーワードを言わせるのです。見ていてこまったも状態になりがちです。
演技の印象としてはあまり乗り気ではない見えたりします。『モスラ』(1961年)に出ていた香川京子みたい?
サム・ジャフェはアインシュタインみたいな教授役でしょう。教授のメモはいい紙を使っている。めくる音でわかります。
これは古典ないい作品でした。買ってあったサントラを聞き直そう。
同じ古典ですが正反対な侵略物の話になっている『遊星よりの物体X』(1951年)
と同時に公開されたのも対照的で何かシンクロニシティを感じます。
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