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2005.07.06

『ムーラン・ルージュ』(2001年)

この作品はバズ・ラーマン監督、ニコール・キッドマンとユアン・マクレガー主演のミュージカルですがコテコテなメロドラマでもあります。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

2001年 バズマーク・フィルムズ/20世紀フォックス オーストラリア=アメリカ作品
ランニング・タイム◆128分
原題◆Moulin Rouge!
プロット◆ミュージカルは男と女が出会うボーイ・ミーツ・ガールのシンプルな話しでいいのです。
音楽監督◆マリウス・デ・ヴリーズ
20世紀フォックス発売のDVDにて。画質はよいです。スクイーズ収録のフル表示。画面サイズはワイド。上下黒味あり。

キャスト
ニコール・キッドマン→ヒロインのサティーン
ユアン・マクレガー→作家のクリスチャン
リチャード・ロクスボロウ→パトロンの公爵
ジム・ブロードベント→支配人のジドラー
キャロライン・オコーナー→タンゴを踊る女ニニ
ライナル・ハフト→手下のワーナー
ケリー・ウォーカー→メイドのマリー
デオビア・オパレイ→黒人のショコラ
カイリー・ミノーグ→妖精
デビッド・ウェンハム→脚本のオードリー

クリスチャンの4人の仲間。
ジョン・レグイザモ→小人のトゥルーズ
ヤシェック・コーマン→タンゴを踊るアルゼンチン男
マシュー・ウィテット→眼鏡の指揮者
ギャリー・マクドナルド→ヒゲと眼鏡のじいさんSatie

バズ・ラーマン監督の演出はよいと思います。

カット割りが細かいとの評判からもっと凄いのかと思ってましたが、このくらいでちょうどいいのではといった感じでした。
ミュージカルではありませんが私が見た映画では空前のカット割りと思える『ゲッタウェイ』(1972年)よりはゆったりとしています。

よくある細かいカット割りだけで映画のことがわかっていないカット割りではないのがいいです。
ミュージカルの割にはあまり音楽とシンクロしているカット割りではないようですが微妙なずれ具合がいいのかもしれません。

人物1人のショットでの空間の空け方がいい。
人物を真ん中に配置しないでどちらかに寄せているのがいいのです。主演2人をこれで切り返ししてます。ユアン・マクレガーの左側が空いてるのでここを埋めてくれないかなとなると右側の空いたニコール・キッドマンのショットが切り返されるというわけです。ワイドスクリーンのいい使い方です。

ミュージカル映画での欠点の本編が退屈なのはありませんでした。これだけでもいいです。
ミュージカル映画というのは準備とかリハーサルとかが大変そうです。
その肝心の音楽や歌はよかったです。音楽に関してはあまりくわしくないのでこんなことくらいしかありません。
ミュージカルナンバーのシーンはなるべくなら長回しがいいのですがクローズアップショットも使ってほしいとなります。

舞台はパリで1900年から回想に入りパリ1899年となります。この作品は回想物だったのか。
汽車が到着するシーンはなんかサイレント調でF・W・ムルナウ監督の『サンライズ』(1927年)のような感じでした。全体的にクラシックな感じがあります。

舞台の幕が閉じています。
幕が開いて20世紀フォックスのタイトルとなり始ります。

プロローグ
パリ 1900年
もうエッフェル塔があったりします。凄いな。
で、1年前の回想となります。

1899年 愛の夏だった。
張りに出てきた主人公のクリスチャンは成り行きでアパートの上の階で打ち合わせとなります。

アブサンを飲んでカイリー・ミノーグの妖精で出てきます。
カイリー・ミノーグの妖精は見た感じとしてはずいぶんと下品です。主演のニコール・キッドマンも上品とはいえないけど妖精のおかげで上品に見えたりします。

ムーランルージュに入る主人公の一行。
ここでもうサティーンは倒れていたわけです。
2人の出会いで脚本家を公爵と勘違いする図がありました。コメディのルーティンなんですがいい感じです。

作家のクリスチャンの詩を聞いてアナコンダのようにのたうち回るニコール・キッドマン扮するサティーン。もしかしたらヘビ年?なのかいと思ってしまいました。
愛と感動のミュージカルと聞いていましたがだいぶ違うではないですか。もしかしたらこの作品はコメディなの?となりました。これでもいいです。

2人が公爵に見つかりそうなとこや、リハーサルでっち上げとかコメディ調全開で楽しませてくれます。
この人達は加速装置があるのかいきなり動きが早くなったりします。
このシーンがハイライトなのかと思ってしまいました。ニコール・キッドマンは歌えることが出来てコメディもこなせるのですか。たいしたものじゃないですか。

像の部屋の上で『Elephant Love Medley』歌った次に、
公爵が条件をどんどん付けて主導権を握るシーンになるわけです。
話しがついてムーランルージュを劇場に改築します。

そんなわけで前半コメディ調ですが後半はシリアス調となっています。

後半のシリアスは溝口健二監督並みのコテコテ描写の連続でした。
これでできるだけ引っ張って『Come What May』につなぐようです。そんな感じで堪能しました。
もしこの作品を溝口健二監督で撮ったら森雅之と田中絹代あたりでコメディ部分は抜きで当然『Come What May』に代わる歌もなくて全編コテコテメロドラマで通すことになります。これは見たくないな。

いちゃつく2人がジドラーに見られてしまうとこの2人は手持ちカメラのドキュメンタリー調になっているように見えます。ビデオクリップにも使われていたのでメイキングかと思っていました。不思議なものです。

支配人のジドラーにバレて説教されるサティーン。
今夜8時に公爵に会えと命令されたサティーンはまた倒れます。

それで支配人のジドラーが公爵を説得しに行って『Like A Virgin』を歌い踊るわけです。
『Like A Virgin』での召使い達の群舞は非常によいです。ギャグになっています。召使い達のダンス自体は素晴らしいというか非常によく訓練されていると思えます。
それにしてもこのナンバーは傑作です。いい歳こいたオヤジ2人が「バージン、バージン」と連発しているんだから・・・

医者に診察されるサティーン。
ここでもう命は短いと宣告されます。知ってるのは支配人ジドラーとメイドのマリーだけです。サティーン本人は知らない。
このような展開になっています。ベタな展開ですが別に構わない。

アパートにてサティーンの方から別れ話となります。
リハーサルのシーンになって、
で、『Come What May』につながります。
意地悪なニニがちゃちを入れるシーンがあるわけです。
激怒する公爵。これで明日の朝にリハーサルをして、その夜に初公演となるようです。結構話しは早い。

今夜、公爵に会いに行くサティーン。
で、『El Tango De Roxanne』とクリスチャンの歌との3ヶ所カットバックをするんです。公爵が殴り倒されるまでのこのシークエンスもいい。
公爵の自宅というから高級アパート?はすぐ隣にあるようです。今日初めて気がついた。

それで一緒に逃げようとなります。
支配人ジドラーにもうすぐ死ぬと言われるサティーン。これで説教されるわけです。
で、『The Show Must Go On』のナンバーとなります。

また別れ話となります。今度は本気のサティーンです。

ムーランルージュから叩き出されるクリスチャン。
で、タイプライターを質に入れてムーランルージュに潜入します。

初公演が始ります。
で、ジョン・レグイザモが初めて事情に気がついて奔走するわけです。
痴話喧嘩の最中に舞台の真ん中に出されてしまいます。凄いな。
このあたりは無理やり盛り上げています。これも凄いな。たいしたものです。
そんなこんなで回想は終わりラストとなります。


キャストで・・・
ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガーの主演2人の歌は素晴らしい。
特にミュージカル出身でもない俳優なのにこんなに歌がこなせるとは信じられません。たいしたものです。スターが歌うというのはこれほどまでアドバンテージがあるものかと感心します。2人とも私のご贔屓のスターだからかもしれませんが。
これで2人がタップダンスでも披露したら私にとってホトンド完ぺきなミュージカルとなりますが、さすがにそこまではやっていません。

歌が歌えるこれは大きいアドバンテージでその代わり歌手というのは多少ルックスが落ちてもしょうがないと思っていたのでこの2人のケースはどうしたのと?なります。これは凄いです。

ニコール・キッドマンは赤毛によく動く青い瞳、横顔のラインがきれい。この作品ではホントにきれいに撮れています。前半のコメディに後半のシリアスと上手く演じ分けていました。
でもニコール・キッドマンは殺しても死にそうもないのに結核ではかない命とはよく考えると変なのですか見てるときは気になりません。
この作品のニコール・キッドマンのイメージはグレース・ケリーというよりもリタ・ヘイワースの方が近いような感じがします。
タバコを持っているショットは最初の方にあったのです。1940年代調でいい感じです。
プレミア誌だと思いますがニコール・キッドマンのカラオケのレパートリーはブロンディだそうです。ブロンディのボーカル デボラ・ハリーとはルックスは異なりますがキャラクターは合い過ぎています。

ニコール・キッドマンの『ムーラン・ルージュ』(2001年)の前には3本見ていました。
『冷たい月を抱く女』(1993年)、『誘う女』(1995年)の悪女役2本に『ピースメーカー』(1997年)の博士役1本。ろくなのは見てなかったようです。この低レベルな作品の中では『ピースメーカー』(1997年)が1番でした。
この作品はキッドマンの代表作となって名を残すでしょう。よかったね代表作があって。と思っていたらその後のキャリアが凄いこと。感心します。

ユアン・マクレガーはキャメロン・ディアスがお目当てで見たら相手役を務めてた『普通じゃない』(1997年)、プロットで見たらたまたま出ていた『ナイトウォッチ』(1998年)、アシュレイ・ジャッドがお目当てで見たらたまたま相手役を務めてた『氷の接吻』(1999年)、の3本を見てコメディもシリアスもOKでいいキャラクターと演技で私のご贔屓の俳優さんの1人になりました。
この『ムーラン・ルージュ』の演技と歌で何の賞も受けてなくノミネートすらないのが不思議です。まあ年月を経ても映画史に残ると思えるのでこれが本物の名誉となるので別にかまいませんか。
どこにそんな才能をかくしていたのかと思えるくらい歌が上手い。素晴らしい歌い方です。『エビータ』(1996年)のアントニオ・バンデラスもそうなのですが映画のミュージカルになると男が歌うのもよかったりします。

目立っているのが余計なことを言ったりタンゴを踊る女性キャラ。キャロライン・オコーナー。この人は舞台の人?
パトロンの公爵を演じるリチャード・ロクスボロウはいい悪役ぶりでした。ちゃんと公爵らしく見えます。とても『ミッション:インポッシブル2』/『M:I-2』(2000年)のケチな手下とは思えません。

有名な女優サラ・ベルナールって誰?
タイプライターはアンダーウッド製となっています。これは有名なブランドで今のキー配列であるQWERTY配列を普及させていたとのことです。


この作品はロック・ミュージカルということのようです。
『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)『トミー』(1975年)『エビータ』(1996年)、とかの流れをくむ作品となるようです。


この作品は『オペラ座の怪人』(2004年)とホトンド同じ展開というか演出になっているみたい。それでも全然出来は違うから面白い。
この作品も途中でチョコチョコとタイプライターを打つショットが入っています。
あまり不快にはならないのはどうして?
今日見るまで全然気がつかないというか、気になっていなかった。

バズ・ラーマン監督は元々何をしてた人?、『ダンシング・ヒーロー』(1992年)から映画に来た人だからダンス関係の人なのか?
それでは構成は同じなのに何で『オペラ座の怪人』(2004年)はダメだったんだ?
やっぱり演出が違うんです。そう思います。

そんなわけでこれは傑作です。
ただスターが歌えばいいというものではないこの1作限りの出来とも思えます。バズ・ラーマン監督のまぐれでは?と思えたりします。
私のミュージカルの最高傑作は『バンド・ワゴン』(1953年)でしたが『ムーラン・ルージュ』(2001年)はミュージカルの手法は違いますがこれに匹敵する作品だと思いました。


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