『遊星よりの物体X』(1951年)
この作品は実質ハワード・ホークス監督作品だと言われている有名な侵略物SFアクションのようです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1951年 ハワード・ホークス・プロ/ウィンチェスター・ピクチャーズ/RKOラジオ・ピクチャーズ アメリカ作品
ランニング・タイム◆86分
原題◆The Thing From Another World
プロット◆The Thingを相手に苦戦する話のようです。
音楽◆ディミトリ・ティオムキン よいスコアです。シーンとシンクロしていました。
キャスト
ケネス・トビー→空軍のパット・ヘンドリー大尉
マーガレット・シェリダン→博士秘書のニッキー
ダグラス・スペンサー→口が悪いスコット記者
ジェームズ・ヤング→エディ・ダイクス中尉
ウィリアム・セルフ→ガバメントを連射したバーンズ伍長
デューイ・マーティン→ボブ M1カービンを撃つ
ロバート・ニコルズ→マクファーソン 最初の見張り
ニコラス・バイロン→通信担当のテックス
ロバート・コーンスウエスト→偏屈なキャリントン博士
エドュアルド・フランツ→スターン博士 顕微鏡を見る。温室で襲われてケガをする。
不明→オルソン博士 温室でやられる
不明→アワーバック博士 温室でやられる
ポール・フリース→ボーヒー博士
エベレット・グラス→ウィルソン博士 聴診器をあてるおじいさんの博士
ジョン・ディーケス→チャップマン博士 背が高い。
サリー・クレイトン→チャップマン夫人
ジェームズ・アーネス→物体X
クリスチャン・ナイビー監督の演出はよいと思います。
実はハワード・ホークスが監督らしいけど。このことは有名というよりIMDbにはアンクレジットと表記してハワード・ホークスが監督していることになっています。
キャラクターや話の展開はハワード・ホークス監督作品そのものです。
だいたいヒロインの女優さんがハワード・ホークス監督の好みのタイプです。
脚本がよく出来ている思われます。
それぞれのキャラが生き生きと描写されていて、見せ場をそれなりに描写バランスもちゃんととってあって感心してしまいます。
スタッフはハワード・ホークス監督作品でおなじみな方々となっています。
超一流のスタッフがそろっています。脚本チャールズ・レデラーとベン・ヘクトの2人、撮影のラッセル・ハーラン、音楽のディミトリ・ティオムキン等。
で、スコット記者の毒舌セリフはベン・ヘクトが担当したのでしょう。
◆IVC発売のDVDにて。画質はよいけど時々悪くなります。
以前に買ったレーザーディスク株式会社発売のLDにあった映画批評家宇田川幸洋監修の日本語字幕での気の利いたセリフがDVDになるとホトンドなくなっています。
この作品に限らず全体的な傾向として日本語字幕を改訂するたびにデリカシーがなくなっているよう感じがします。配慮しようとして却っておかしくなっているような。自主規制も過敏になり過ぎです。こまったものです。
プロローグ。
アンカレッジのアメリカ軍基地の将校クラブにて。
ダグラス・スペンサー扮する記者のスコットがやって来て雑談となります。ネタがないかとなっています。
ケネス・トビー扮するヘンドリー大尉が上司に呼ばれて北極基地へと向かうことになります。
ダグラスDC-3=C47輸送機で移動します。
スコット記者を含めて5人乗っています。犬ぞり用の犬もいます。
北極基地に到着します。
到着早々、彼女に会いに行くヘンドリー大尉。マーガレット・シェリダン扮する博士の助手をしてるニッキーが彼女です。
色々と話し込みます。
研究室に移動するヘンドリー大尉とニッキー。
ロバート・コーンスウエスト扮する怖そうなキャリントン博士がいます。仕事の鬼らしい。
今回の件について説明を受けます。謎の飛行物体が基地から東48マイル地点に落下したとのことです。
C47輸送機でその地点へ向かいます。
発見して近くに着陸します。犬ぞりと歩いたりスキーで移動します。移動にはかんじきも使っています。
氷の中に件の物体を発見して形を確認すると円盤とわかります。
垂直尾翼にあたる部分が氷上に露出しています。
スコット記者は取材させろとうるさい。カメラを取上げられて激怒しています。
で、円盤を氷から出すためにテルミット爆弾で氷を溶かすことになります。爆破したところ円盤まで爆発焼失となってしまいます。
スコット記者はこの不始末をこき下ろします。これが嫌味な描写になっていないのがいいとこです。
どうしましょうとなったとこでガイガーカウンターが反応します。
後のシーンでもそうですが、この作品でのガイガーカウンターの映画的な使い方はホトンド完成の域に達しています。当然他の作品でも引用されています。
ガイガーカウンターが反応した場所には何か人影のような物が氷の中に埋まっています。今度を氷ごと掘り出し持ち帰ることになります。
C47輸送機は行きは左向きで帰りは右向きになっています。
アクションの方向性をそろえる映画の基本的手法となっています。
基地です。
掘り出した物を倉庫に運び込みます。科学者と軍人が対処を巡り議論となります。
掘り出した物には見張りを付けます。
軍上層部に連絡しようとしますが無線が不調で上手くいかず。将軍はうるさいだけのようです。
スコット記者やヘンドリー大尉等が話し中。
見張り担当から氷の中からにらまれていると苦情が来たりします。
ヘンドリー大尉とニッキーは別室で恋人同士の会話となります。
ラブシーンのルーティンな描写でタバコに火を付けるシーンあり。
後ろ手に固定したり、キスをしたりと。何をやってんだ?
見張り担当はバーンズ伍長になります。
ここで氷の中の異星人の形相が凄くて思わず毛布をかけてしまいます。これが電気毛布で氷が溶け始めます。
時間経過で表につながれている犬達をショットがあります。犬は寒さに強いようです。
怪しい影がバーンズ伍長に迫ります。コルト・ガバメントを連射して対応します。
その場を逃げ出して食堂のヘンドリー大尉にこの件を訴えます。
動揺しているのでコルト・ガバメントを構えたまま話しているのがそれらしい描写です。暴発したら大変なのでヘンドリー大尉はコルト・ガバメントを取り上げます。
ヘンドリー大尉一行は倉庫に調べに行きます。
溶けた氷にはかなり大きい人型の跡があります。肝心の中身は消えています。
で、中身の物体は外の犬達と大格闘大会となっています。犬を投げつけていますが逆に犬に腕を食いちぎられます。
物体の腕を回収して調べることになります。
この物体は植物とのことです。色々とたとえがあります。
議論していて時間が経過したとこ腕だけでも動き始めます。これは動く腕だけを見せるように見せたくないとこに物を置いて隠すように構図を決める簡単なトリックですが効果的なショットです。
ヘンドリー大尉御一行は建物内を捜索します。
無線室を手始めに捜索します。で、無線室はほったらかしで次の捜索となります。
「野放しなのかい」と突っ込む通信担当はテックスがいい。→DVDの日本語字幕ではカットされています。
ガイガーカウンターが反応しますが、これはサンプルのアイソトープでした。
これは接近するとガイガーカウンターが反応する伏線になっているようです。上手いじゃん。
温室を捜索します。
軍人連中は気付かないが科学者達は植物が冷気に触れているので外から物体Xが侵入したことに気がつきます。
軍人達を送り出して科学者だけで物体Xとコンタクトを取ろうなります。
スコット記者はこの顛末をこき下ろしています。
円盤を失い火星人を失ったと言ってます。アメリカ人は地球人以外は何でも火星人になるようです。
温室では科学者達が室内を調べ直しています。
物入れの中が怪しいと開けたらビックリの演出となっています。
犬の死体が転がり出てきます。未見だとこのシーンはかなりなものです。調べると血がなくなっているとわかります。
物体Xは不明のままです。
食堂では捜索で外から帰った連中が寒いとか愚痴が出ています。
ここに科学者の1人が温室から救援を求めて来ます。緊急事態となり温室を中と外から挟み撃ちにすることになります。
ヘンドリー大尉が屋内から温室のドアを開けようとします。
で、ドアを開けたら目の前にやる気満々の物体Xが控えていてビックリ演出となります。未見だとかなりなものです。
続いてM1カービン銃を連射のシーンもあります。狭い通路内で撃つのでかなりの迫力があります。
後で反対側の外に待機していた人が「今度をもっと上に向けて撃ってくれ」と言うのがディテールが芸コマでいいです。→DVDの日本語字幕ではカット変更されています。
この件のことでキャリントン博士を詰問するヘンドリー大尉。
温室内外の両方のドアを厳重に補強して物体Xを一応温室に閉じこめたことになります。
科学者達の打ち合わせとなります。
キャリントン博士は物体Xがどのように繁殖するのか輸血用血液を使い実験をしていました。
他の科学者達は早く対策すべきと意見しますがキャリントン博士は調べるのが優先となっています。
で、この輸血用血液から足がついて、ニッキーがキャリントン博士のメモをヘンドリー大尉に見せて、実験室はヘンドリー大尉の手入れを受けることになります。
この時のヘンドリー大尉のセリフがいい。「ここは瓶だが、温室では人間が咽を切り裂かれている」と言ってます。説得力充分です。
食堂にて。外から温室を見張っている連中が戻ります。
寒くて持たないと泣きが入ります。
で、物体Xの対策でどうすれどいいかと議論になって焼くことがいいのではとなります。そんなことからまたガイガーカウンターが反応して物体Xが接近しているとわかります。
大急ぎで灯油をかけて照明弾で点火だとプランが決まりその準備が整います。
灯油をケロシンと言ってます。
照明弾担当がハワード・ホークス監督の『ヨーク軍曹』(1941年)のことを言う楽屋オチもあります。→DVDの日本語字幕ではカットされています。
ガイガーカウンターが強烈に反応していよいよ物体Xが食堂に乱入してきます。
火を付けたりして物体Xを何とか撃退しますが後始末が大変で一騒動となっています。
また対策となります。電撃で焼けばと準備となります。
無線室でスコット記者、ニッキー、ヘンドリー大尉と話しをしているとこで室内の気温が急激に下がっていることがわかります。物体Xに灯油を切られてしまったらしい。
このままではマイナス40度になってしまうので発電室に立てこもり最後の決戦となります。
現場にいたいスコット記者の「沖縄に行けなかった」のセリフはDVD日本語字幕ではカットされていました。どこに配慮しているかわけわからん。
ガイガーカウンターが反応し始めます。
キャリントン博士が発電機を切ってしまう。ここは何とか取り押さえます。
物体Xは接近してきます。ここでキャリントン博士は物体Xを説得しようとしますが殴り飛ばされます。あくまでも科学者らしいとこを見せています。
物体Xが上手い具合に電撃の場所に移動しないので物を投げつける小ネタがあります。上手いじゃん。
物体Xの動きと音楽がシンクロしています。上手いじゃん。
で、電撃で何とか物体Xを始末します。
エピローグとなります。
無線室にて。スコット記者が報告します。
犠牲はなかったなんてDVDの日本語字幕では言ってます。翻訳から意訳になって超訳となる。犠牲はありました。全然違うではないか。こまったものです。
で、有名なセリフ「空を見ろ」でエンドとなります。
◆追記です。新しく発売されたDVD。
TCメディア/株式会社ニューライン/株式会社オルスタックソフト発売のDVDにて。
画質はまあまあ。こんなものでしょう。
スクイーズ収録のフル表示。
画面サイズはスタンダード。左右に黒味あり。
音声はドルビーデジタル2.0ch モノラル
IVCから発売元が変わり日本語字幕はまともになってました。
おかしな部分は全部直っています。素晴らしい。このDVDは買う価値はあります。
イマイチな日本語字幕だったIVCのDVDはゴミ箱に捨てよう。売り飛ばして流通させてはいけないと思える。
肝心の作品はまぎれもないハワード・ホークス監督作品です。
みんなで協力、各自やることはやる、てなもので、まあ、見事なものです。これは脚本がいいのかな。
キャラのバランスの取り方なども、見事なものです。キャリントン博士の描き方なんてフツーならイヤミで、オーバーアクトで収拾つかなくなると思いますが、ここでは上手なものです。
そんなわけでこれは傑作のよい作品でした。
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