『夜ごとの美女』(1952年)
この作品はルネ・クレール監督、ジェラール・フィリップ主演の夢を扱ったファンタスティック・コメディのようです。
私のお気に入りの作品です。夢を見る話しの絶品となっています。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1952年 Franco London Films/Rizzoli Film/Gaumont (1952) (France) (theatrical) (35 and 16 mm) フランス=イタリア作品
ランニング・タイム◆87分
原題◆Les Belles de Nuit
プロット◆現実逃避で夢を見てたら自作のオペラが採用される話しのようです。
音楽◆ジョルジュ・ヴァン・パリス
BS193 WOWOWにて。
画質は非常によいです。おそらく前に買ったDVDソフトよりよいと思う。
スクイーズ収録録画のフル表示。
画面サイズはスタンダード。左右に黒味あり。
音声は AAC 1.0ch
キャスト
ジェラール・フィリップ→音楽教師のクロード
マガリ・ヴァンドイユ→ルイ16世時代の貴族令嬢/現代の修理工の娘シュザンヌ
マルティーヌ・キャロル→1900年の御婦人エドメ/現代の御婦人
ジーナ・ロロブリジダ→1830年のアルジェリア美人レイラ/現代のカフェのレジ係
マリリン・ビュフェル→ルイ13世時代の美人/眼鏡の郵便局員
パロー→カフェの老人/それぞれの時代で文句が多い老人
ビシュエール→自動車修理工のロジェ
ジャン・パレデス→薬屋のポール
ベルナール・ラジャリジュ→警官のレオン
ルネ・クレール監督の演出はよいと思います。
全編に渡り夢を描写する演出、設定、手法がいい優れ物な作品です。
この作品は要するに『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)で連続して夢を見るシークエンスが全編に渡っているようなものなのです。
シーン転換の手法のサンプル集といってもいいくらい上手いです。
フェイドや溶暗等は使わない要するに舞台の手法のバリエーションだと思えます。見ているとこれが映画的で最高なのです。
書き割りのセットがいい。
このようなセンスは大好きです。使い方ではドイツ表現主義の影響も感じられます。
スクリーンプロセスも使っています。
セットばかりと思っていたらロケをありました。
珍しい?かも。川はもちろんセーヌ川かと思ってましたが後になってクルマでパリへ行くので違ってました。ということはバリではない街が舞台のようです。
ミュージカル感覚も楽しい作品です。歌が効果的に使われています。
当時はオペラを侮辱していると言われたと思われます。でも私はこのようなセンスは大好きです。
傑作なのはいつの時代でも何かというと出てくるじいさんで「わしの若い頃の昔はよかった」とのたまいます。いつの時代でも同じ俳優さんが演じてるのも面白いアイロニーが効いたギャグです。
現実の日本でなら何かというと「欧米では・・」というやつになります。これは最低。いまだに通用するのがまた不思議。
黒味で序曲があります。
ピアノを聞く修理工の娘シュザンヌ。ピアノに対比してバイクのクラクション音やエンジン音がおおげさに出しています。
そんな感じでピアノを弾くジェラール・フィリップ扮する小学校の音楽教師のクロード、ピアノの邪魔する騒音の描写が盛りだくさんとなっています。
女の子にピアノを教える家庭教師もやっているようです。
ここで教えながら壁の絵を見ながら夢の世界へとなります。この入り方がセンスがいい。夢の中でも一応今は夢を見ているという自覚はあるようです。
オペラの手紙の件でいきなり歌ってオペラになるのがいい。
いきなり歌い出すミュージカルでもあります。軽いオペラというのですか?
現実では家賃滞納で大事なピアノを持っていくと言われています。
夢ではアルジェリアへとなります。フランスから出征してアルジェリアへの描写はフランス国旗にバックが書き割りの背景が変わるモンタージュとなっています。戦争の描写はそのフランス国旗が焼けてしまうとなっています。
現実では手紙を受け取り損ねて郵便局に出向いたが身分証明書がないとダメと言われて暴れて警察署にぶち込まれます。これで夢が見られるとかえって都合がいいとなっています。
ルイ16世の時代では吊った蝶をそのまま使うシーンがありました。
この場合はバックが書き割りだしあまり不自然には見えません。夢のシーンでもありますし。
夢の世界ではあっちこっちに行くので結構忙しいクロード。
フランス語では何というか知りませんが羊を数えるのはsheepとsleepの韻を踏んでいるのがあるということらしい。ですから日本語で羊を数えてもあまり意味がないように思えます。
フランスのアパートのベッドには天井灯の手元スイッチがあります。さすがケチな国です。合理的ともいう。
あまりクロードが眠りたがるので自殺するのと勘違いされて知人3人に色々と世話をやかれます。警官に薬屋に修理工のトリオが見張ります。。
革命のルイ16世時代には腰に巻いた3色の帯があれば革命の闘士としてどこでもフリーパスとなっていますが無くしたらすぐに捕まりギロチン送りとなります。
捕まった奴が盗んだ3色の帯をつければどこでもフリーパスとなっています。このギャグと身分証明書は期限が切れていますというのが一緒になってまたギャグとなっていて洒落ています。
夢の世界で捕まってギロチンにかけられそうになったので今度は眠りたくなくないクロード。古典的にコーヒーを飲んでいます。
夢でクロードの自作オペラが大失敗の描写がまたぶっ飛んでいます。
ここで左グリップがスロットルのバイクが登場していました。左グリップがスロットルのバイクはホントにあったんだ。
ここにバイクが登場していますがさすがに車種がわからん。私はホンダCB750が登場した1969年以降でないとわからんのです。
原始時代へと向かうクロード。
背景では書き割りで動く恐竜がいます。いいかげんでいいです。
原始人と恐竜が同時に存在する映画ならではの原始時代となっています。
ここでも昔はよかったというじいさんがいます。これよりまだ昔があるのか。そうなると三葉虫やアメーバになっても昔はよかったとなるようです。
クライマックスではジープに乗ってクロードと3人は原始時代から現代へと突っ走ります。ギロチンにかけられそうになった時代では止まってはダメというギャグがあったりします。
ようやく現代に戻ったとこで受け取れなかった手紙をもらい、パリに向かいます。
それでハッピーエンドとなります。
目まぐるしくシーンやキャラクターが変わるので女優さん達の見分けがつかないのがこまったものです。
その中でもアルジェリア美人を演じるジーナ・ロロブリジダの美しさが目を引きます。きれいなお腹を見せてくれるのがいいです。
そんわけでシュールでぶっ飛んでるよい作品でした。これは傑作です。
『夜ごとの美女』(1952年)を最初に見たのはかなり以前に地上波放送で夜中に途中から見て、これは面白い。映画ってこんなに面白いかと私が映画に入れ込むきっかけになった作品の1つです。
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