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2005.05.28

『愛人ジュリエット』(1950年)

この作品はマルセル・カルネ監督、ジェラール・フィリップ主演の幻想ドラマです。
夢を扱った優れ物の作品となっています。
あまりフランス映画を見ない私のフランスのスターで御贔屓なのはジェラール・フィリップとジャン=ポール・ベルモンドだったりします。
で、私にとってジェラール・フィリップはファンタスティック・ムービー専門のスターです。この作品の他に『悪魔の美しさ』(49年)『夜ごとの美女』(52年)が私のお気に入りとなっています。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1950年 フランス作品
原題◆Juliette ou la Clef des Songes
プロット 留置所で夢を見る話しのようです。
画質 非常によい。DVDにて。
音楽 ジョセフ・コスマ、音楽は見事に使い分けていました。

キャスト
ジェラール・フィリップ→留置所で夢を見る男ミシェル
シュザンヌ・クルーティエ→夢と現実のジュリエット
イブ・ロベール→皮肉屋のアコーディオン弾き
ロジェ・コシモン→夢ではご領主の青髭、現実ではジェラール・フィリップの雇い主ベランジュ氏
エドゥアール・デルモン→村の駐在

マルセル・カルネ監督の演出はよいと思います。
タイトルバックに鍵のレリーフがあります。これは何かの象徴なのでしょうね。。→これは夢の中の世界へのドアの鍵ということなのかもしれません。これをジェラール・フィリップ扮するミシェルは見つけたとなっていうことですか。
夢を見ているとのことなので話しの方もいきなりお城があったりダンス大会があったりとそんな感じになっています。

会話シーンの切り返しはやってません。ですがラストの2人のとこでは切り返してたりします。
夢なので当然話しは不条理に進みます。でもこれが面白い。
夢から覚めれば夢の人が現実にもいます。忘却の国-現実にキャラが重なってます。刑事=刑事、青髭=主人になってます。こういうのは洒落てていいです。
同じセリフのくり返しのアイロニーがあります。
城のセットが見事です。森もセットなのですと。ここからレイアウトを思いついたのか?消失点がわかりやすくなっているような。とういうか微妙な構図が多い。

この『愛人ジュリエット』という邦題からすると昼メロのようですがそうではない作品となっています。私には幻想劇というよりSFだと思えます。

前説がありましてこの作品を全部要約してます。ネタバレ全開となっていてヘタな作品だとこれで終わってしまいそうです。当然この作品はそんなことはないです。

恋人と海に行くために店のカネに手を付けたジェラール・フィリップ扮する店員ミシェルは留置所で夢を見ます。ドアが開いて陽がさします。そこから出ると晴れた日の午後の世界となっています。

夢の中の村は晴れた日の午後しかないように見えます。高いとこから山々を見下ろす構図も夢の世界です。
この忘却の村は針の無い文字盤の時計塔があります。それに大工仕事のトントンと効果音がしっかりと付いています。日付の分からない村等々と押井守監督の『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』(84年)に多大な影響を与えているようです。


やって来たミシェルがジュリエットの名を出すとみんなでジュリエットを探せとなります。
シュザンヌ・クルーティエ扮するジュリエットが登場。素敵なイブニングドレス姿です。何というか夢のようです。そりゃそうか。
びっこの男がミシェルをジュリエットは死んだと墓に案内します。それを否定するアコーディオン弾きの男が登場。
アコーディオンとハッキリと言ってます。バンドネオンとは違うの?となります。どっち?
シュザンヌ・クルーティエ扮する記憶のないジュリエットは領主の城へ馬車で向かいます。このヒロインと領主のシーンは結構長い。

ミシェルは自称刑事に思い出を白状しろとボコボコにされます。
それから城に助けを求めに行きます。
城に入ったとこで領主にお前は貧乏な身なりをしているとハッキリと言われたりします。よけいなお世話です。
ミシェルは領主にも記憶はどうしたと責められます。
別室の閉じこめられていたジュリエットは城から逃亡してます。

城から出て森に入るミシェル。
森はダンス大会となっています。青春オヤジがやっているカフェがあったりします。
ミシェルとアコーディオン弾きの男が話しをします。アコーディオン弾きの男が言うには「私には記憶がないが思い出がある君は不幸だ」とか。色々と話します。
3年前の手紙を届けにやってくる郵便配達。
手相を見る男。やせていて誰かに似ています。
方位磁石を持っているミシェル。ここで唐突にジュリエットと会います。
思い出の品を乗せた屋台がやってきます。
ジュリエットに日曜日に海へ行く話しをするミシェル。ここではカネを盗んだ店員は自分ではないとしているミシェル。
領主が猟犬をつれて狩りに来ます。何を狩るのかというとジュリエットを狩りに来ていたようです。
思い出がポイントとなって馬車に乗るジュリエット。ミシェルが少しいなくなっただけで記憶がなくなってしまうジュリエット。決して健忘症ではない。
領主はジュリエットを連れて城に帰ります。

城では領主に戸棚に関しての説明を受けるヒロイン。7番目の戸棚の中には何がある?→ウェディングドレスが入っていたようです。
そこに村人を率いてミシェルが乗り込んできます。そんなこんなで領主は青髯だとなります。それならそれで結構とヒロインとの結婚式を進める領主。かなり唐突な展開となっています。こういうのは好きですね。
結婚式を止めようとするミシェル。思い出の話しをします。で、店のカネを盗んだ事実も話します。ここで鐘の音が響き現実に戻ることになります。

目が覚めるミシェル。現実に戻ります。
ムショから呼び出されて取り調べを受けるミシェル。
1200フランを盗んでいたようです。店主の意向で不起訴となります。店主ベランジュ氏とジュリエットは結婚するとわかる。カネがないとハッキリ言われたりします。
それでは貧乏人が結婚するには後先考えずにやってガキが出来てしまうことしかないのかとなります。

ジュリエットのアパートに忍び込むミシェル。すぐにジュリエットが帰宅して話しとなります。ここでもカネがないとハッキリ言われたりします。

ジュリエットのアパートを出るミシェル。ジュリエットが追いかけます。
工事現場に隠れてジュリエットやり過ごすミシェル。
このラスト近くで現実の夜の街を徘徊するシーンでは、階段のショット。夜の街の照明、扉を開けると光が当たる。とここは押井守監督の『紅い眼鏡』(87年)にも多大な影響を与えています。

ミシェルはドアを開けます。エンドとなります。素晴らしい。


ジェラール・フィリップがムショに入ってて光があたり目が覚めるとこでは無精ひげが消えていました。見ててこれは夢ですなと分かります。
日曜日に彼女と海に行く。これがポイントになっています。「海には行けなかった。」このセリフが何故か印象的。
夢から目が覚めるとムショの中となります。そこから告訴取り下げとなり、夜のシーンとなります。
ジェラール・フィリップは恋人のために犯罪を犯したことになるとするとフランスは情熱的犯罪には好意的?これは『日曜日が待ち遠しい!』(83年)で言ってました。

シュザンヌ・クルーティエは夢の中ではイブニングドレス姿で通していました。これはいいな。ご領主のいうところの貧乏人の身なりらしいジェラール・フィリップとの対比がいいのですが、何回か見てるとシュザンヌ・クルーティエよりジェラール・フィリップの方が魅力的に見えたりします。何でジェラール・フィリップはこの人にほれたんだと根本的な疑問が出そうになったりします。
現実のジュリエットはあなたにはおカネがないとハッキリと言ってます。文字通りに現実的です。

ご領主様のキャラはなかなかでした。傲慢で村の人達と同じで記憶はないのにこれが我慢ならないとか。ヒロインと強引に結婚しようとしたりとやってくれます。現実に戻ると年相応に落ち着いたキャラでした。でもホントにヒロインと結婚しようとしていたりします。

DVDの特典を見ていたら兵士役はロラン・ルザッフルと知りました。どこかで聞いたような名前で、本『映画の学校』から『泥棒成金』(55年)でリビエラの海水浴場で鉄棒にぶら下がったいた人らしい。


そんなわけで夢を扱う話の傑作だと思います。スターのジェラール・フィリップが演じることでこの作品の魅力が倍増しています。

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