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2005.04.09

『逃走迷路』(1942年)

この作品はアルフレッド・ヒッチコック監督、ロバート・カミングス、プリシラ・レイン主演の巻きこまれ型サスペンスのようです。製作年から戦時色が濃い話しになっています。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1942年 フランク・ロイド・プロダクション/ユニバーサル・ピクチャーズ アメリカ作品
ランニング・タイム◆109分
日本での初公開は1979年です。IP配給にしてはいい邦題です。珍しいことです。
プロット◆破壊工作犯と間違えられて悪戦苦闘する話しのようです。
音楽◆フランク・スキナー あまりよくなくてただ鳴ってるだけのとこもありました。クライマックスではバーナード・ハーマン風のスコアになっていた。てことはこのスコアはヒッチコックの好みでもあるのか。
ユニバーサル・ピクチャーズ発売のDVDにて。画質はよいです。

キャスト
ロバート・カミングス→工員のバリー・ケイン容疑者
プリシラ・レイン→ヒロインで広告モデルのパット
ノーマン・ロイド→破壊工作員のフライ
オットー・クルーガー→破壊工作の親玉トービン
アラン・バクスター→メガネの工作員フリーマン
クレム・ビーバンズ→文句が多い工作員ニールソンじいさん
バージル・サマーズ→焼け死んだケン・メイソン
ドロシー・ピーターソン→ケン・メイソンの母
マーレー・アルパー→協力的なトラック運転手
ボーン・グレーザー→盲目の老人フィリップ・マーチン
アルマ・クルーガー→パーティ主催のサットン夫人

アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
本『映画術』で言ってる通りに色々とアイデアを詰め込んであります。戦艦アラスカ破壊工作のシークエンス、等々まあ大したものです。
脚本の1人ドロシー・パーカーの洒落たセリフはと注目して見てました。セリフは、けっこう気がきいています。かなり凝った感じです。
セット、ロケ、スクリーンプロセス等のショットをごちゃまぜに組み立てる手法が好きなようです。
そのセット撮影が多用されていますが肝心のセットが安っぽい。まるで英国時代の作品のようです。
追われるバリー・ケインが手錠を取り外すエクスキューズはちゃんと描かれています。こうゆうのが案外と気になったりします。

タイトルでヒッチコック監督は独立系プロデューサーのデビッド・O・セルズニックから貸し出されたことが表示されていました。この時期は例によって7年契約を結んでいました。


プロローグ。
飛行機工場にて。さすがに話が早い。あっというまにサボタージュ活動が行われロバート・カミングス扮する工員のバリー・ケインはすぐに追われます。

トラックに乗るバリー・ケイン。
帽子を見せに行くの気の利いたセリフがあります。本『お楽しみはこれからだ』の通りのセリフ字幕ではないのが残念ですが。
何故かヒッチハイクで乗ったトラックの運ちゃんが協力的。今回見てようやく気がついたのですが走行中の雑談で軍需工場は採用条件が厳しいんだろ。前科があったら云々と言ってましたがこれは自分のことを言っていたのでしょう。ですから後で手錠をかけられたバリー・ケインを見て逃がすのに協力したと思えました。凝ってる脚本です。

ディープ・スプリングス牧場に行くバリー・ケイン。
手紙を手掛かりに訪ねますが当局に捕まります。
このシーンでは馬に乗って逃げるバリー・ケインを追うカウボーイ達のシーンがあったりします。投げ縄で捕まえるのが面白い。ヒッチコック監督の映画を作るパターンでその土地には何がある?それをアイデアにするのがあります。
で、アメリカには何があるかのパターンなのでしょう。

盲目の老人の家に行くバリー・ケイン。
ここは『フランケンシュタイン』(1931年)からの引用という説があるようです。なるほど。そう言われればそうです。
ここでプリシラ・レイン扮する広告モデルのパットが登場。

ユーモアのあるシーン。
必死に逃げようとするパットを押さえてクルマに押し込むバリー・ケイン。クルマで通り掛かりの老夫婦がこれを見て「仲がいいこと」という落ちのセリフで決めます。最高です。字幕は違っていましたがこのシーンでは映画館で見たときも笑いがもれていました。

サーカス団に紛れ込むバリー・ケインとパット。
ロングショットでのトラックの列はミニチュアのようです。

ソーダシティへ行くバリー・ケインとパット。
廃工場しかありません。水力発電のダムを覗く部屋があります。破壊工作の準備といった感じです。

東部へ行くバリー・ケイン。何故かパットも別に行くことになります。
パーティ会場から逃げられなくなります。これはヒッチコック監督が得意のシチュエーションです。群衆の中での密室というやつです。
スクリーンプロセスで踊る2人。何でここもそうなるのか不思議です。

オットー・クルーガー扮する破壊工作の親玉トービンは「大衆はバカだ・・・」なるセリフを吐いていました。
追っかけシーンで出てくるラジオシティミュージックホールで上映されている作品はなんでしょう。コメディです。

地下室で火事を起こして火災報知器を作動させ、そのリアクションのシーンは『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)に引用されてような感じです。こっちの方が全然早いのでそうなのでしょう。

ブルックリン造船所にて。
破壊活動を阻止しようとするバリー・ケイン。
この作品で白眉の戦艦アラスカ進水式破壊工作のシーンです。
爆発は合成(当然ですか)ですが下から上にパンニングしてリアクションのショットをカットバックさせる。いいシーンでした。1940年代のヒッチコック監督はトリッキーなショットが多い印象がありますがこの作品も結構詰まっています。
進水式のシーンでは群衆や杭を打つショット等いかにもライブフィルムの流用といったシーンがありました。B級っぽいとこです。

ロックフェラーセンターからラジオシティミュージックホールへ。
上映されている劇中映画のコメディはオリジナルのようです。
自由の女神があるリバティ島へと行くパット。
このへんはスリルとサスペンスのN.Y.観光映画となっています。

クライマックスは自由の女神でクリフハンギング。
合成使いまくりのシーンが多用されています。
この自由の女神でのシークエンスには期待のレベルのセッティングは抑え目にしましょう。初見のときはこれで失敗したものです。なんだいこんなもんかいとなったものでした。間のびしているではないかと正直言ってそう思いました。
普通に見ればよいシーンです。

プリシラ・レインはヒッチコック監督の好みではないとのことですが何となく分かります。アメリカの南部美人といった感じです。私はいいけど。
ロバート・カミングスは熱演していますがやや一本調子な感じ。『海外特派員』(1940年)のジョエル・マクリーより落ちますか?。
それでも主演2人は好演しています。しかしながらやはりスターが出ないと。当時はB級作品となっていたのも分かるような気がします。


こんなに面白いを期待のしすぎでスポイルしていけない作品でした。自由の女神のシーンに期待しすぎると失敗します。実際見れば意外と淡泊な描写でした。もちろん悪いわけはありません。
そんなわけで巻きこまれ型サスペンスのよい作品でした。


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