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2005.04.03

『断崖』(1941年)

この作品は私の好きなアルフレッド・ヒッチコック監督にしては珍しいミステリー小説の映画化となっています。
原作はフランシス・アイルズの『レディに捧げる殺人物語』原題◆Before the Fact『犯行以前』
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1941年 RKOラジオ・ピクチャーズ アメリカ作品
原題◆Suspition
プロット 夫が怪しいと思い込む話のようです。
LDにて。画質はまあまあ。
音楽 フランツ・ワックスマン

キャスト
ジョーン・フォンテーン→将軍の娘リナ
ケイリー・グラント→ロクデナシのジョニー
ナイジェル・ブルース→ジョニーの知人ビーキー
サー・セドリック・ハードウィック→リナの父 マクレドロー将軍
ディム・メイ・ウィッティ→リナの母
ヘザー・エンジェル→メイドのエセル
レオ・G・キャロル→不動産屋のメルベック大尉
レムスデン・ヘアー→ホドソン警部
バーノン・ドーニング→若いベンソン


アルフレッド・ヒッチコック監督の演出はよいと思います。
英国のどこかの都市が舞台です。ロンドンではありません。

プロローグ。
真っ暗で始まります。列車の中でした。最初から意表を突いてます。
メガネに本を読んでいるジョーン・フォンテーン扮する将軍の娘リナ
勝手に乗り込んできて調子のいいことを言ってるがカネはないケイリー・グラント扮するロクデナシのジョニーの足りない切符代を立て替えることになります。

乗馬会です。
乗馬中のリナを見て活発な意外な姿に感心するジョニーです。
ジョニーはリナの家に訪ねてきます。
教会に行くとみせかけて2人だけで散歩となります。ジョニーはリナを強引に口説きにかかります。「モンキーフェイス」のセリフ。このセリフはフリッツ・ラング監督の『死刑執行人もまた死す』(43年)にも出ています。当時は流行っていた言葉なのか?。

帰宅したとこで両親の話を聞いたのがきっかけでジョニーにキスするリナ。
これでジョニーに首ったけのリナ。ですがジョニーはリナを避けているような。

舞踏会です。
行きたくないリナですがジョニーからの手紙を読んでとたんに行くことにします。
舞踏会でジョニーを待っているリナです。
ジョニーが来ますがすぐに抜け出してドライブとなります。キスシーンがある。

両親には内緒で家を出るリナ。
ジョニーと結婚します。新婚旅行のモンタージュ。ステッカーだらけの大きなトランクのショットが気が利いてます。
新居に入りますがさっそくカネのことで怪しくなるジョニー。
カネはどうするのとリナ。口論となったとこで父のマクレドロー将軍からのプレゼントが届きます。2脚の椅子のセットでした。
そんなことから働くことにするジョニー。

ナイジェル・ブルース扮するジョニーの知人ビーキーが訪ねてきます。
ジョニーは競馬通いとのことです。ビーキーはそんなに悪い人ではないようです。
件の椅子のセットがなくなっています。

リナから文句が出そうになるとこでジョニーが豪勢な買物をしてきます。
競馬で大穴を当てたとのことです。
プレゼントの最後は件の椅子のセットを買い戻していたジョニー。押さえるとこを押さえているジョニーです。

ジョニーは不動産関係の仕事をしていないと知るリナ。
プレゼントの2000ポンドはここからだと知ります。不動産屋からは告訴はしないと言われる。
帰宅して実家に帰るつもりのリナ。ところがちょうどよくリナの父マクレドロー将軍が死亡の知らせが届きます。運がいいジョニーです。

遺産相続の席となります。
リナの渡るカネはありません。将軍の肖像画に毒づくジョニーです。


不動産屋を首になった話しをするリナ。ジョニーは言い訳をする。
不動産事業を計画するジョニーとビーキー。ですがあっさりと計画を中止するジョニーです。

見どころのクロスワードパズルのシーンとなります。
何気ない文字の組み合わせからMURDERの文字。
ジョニーがビーキーを崖から突き落とすと考え過ぎで卒倒するリナです。

起きて現場に向かうリナ。
タイヤの跡が崖で消えています。
帰宅するとビーキーは無事でした。考え過ぎだって。

ある日にて。
ホドソン警部と若いベンソンがやって来ます。
パリでビーキーが死んだとのことです。ジョニーが怪しいとなってきます。
2人を送り出したとこで玄関ホールを俯瞰ロングのシーンで窓枠の影がクモの巣のようになるとこがあります。
ジョニーが帰宅します。怪しい。

推理作家イソベルを訪ねるリナ。
ジョニーはビーキーが死んだ手口と同じブランデー殺人の資料を借りていたと知るリナ。また怪しい。

推理作家イソベルの家で食事会です。
毒談義となります。

帰宅します。倒れるリナ。
見舞いに来ているイソベルから毒の話が出ます。またまた怪しい。

この作品の白眉となるミルクのシーンとなります。
暗い中を階段を上がるジョニーが運ぶコップに入っているミルクはホントに光っています。本『映画術』によるとミルクの中に豆電球を入れて光るようにしたそうです。このミルクを強調するのが目的とのことです。

翌朝実家に帰るリナ。送るジョニー。
ドライブです。危ないシーンとなりますが実はこうでしたとなり、2人でやり直そうとエンドとなります。
これは脚本の1番悪い手法なのでは?となります。本『映画術』でもヒッチコック監督がそう言ってるとこがあります。

原作のフランシス・アイルズの『レディに捧げる殺人物語』は映画を見た後で読んだことがあります。
映画の結末では原作ファンの怒りを買いそうです。それでも原作の中盤でのリナがロンドンに行って別の男に傾くとこを全部カットしたのはいいと思います。この点は映画の方がドラマの集約化で上手いと思います。
そもそもRKO側の意向でケイリー・グラントを悪役にしてはいけないという制約があるのですから無理があります。本『映画術』によると映画では原作は違う凝った余韻の残る結末が用意したあったけどこの制約から却下されたそうです。


ケイリー・グラントのヒッチコック監督作品の出演第1作です。
英国の下層階級出身のケイリー・グラントはもちろん芸名で、名前だけではなく容姿や服装に振る舞い等は全部洗練された紳士の演技していたのでしょう。ここがヒッチコック監督が気に入っていたとこなのかも。本人はこの作品のジョニーと似てたいたのかもしれません。違うのはケイリー・グラントはケチだったことぐらいです。
本『映画術』によるとヒッチコック監督不在の時にRKOのプロデューサーが勝手に試写してケイリー・グラントが怪しく見えるシーンを勝手にをカットしていったら半分ぐらいになってしまったそうです。

ジョーン・フォンテーンはきれいに撮れています。
メガネがないと字が見えないリナです。メガネを外すと美人という古典的な設定となっています。

キャスティングですがサポートに英国時代に使った俳優をハリウッドでまた使うことが多いようです。ヒッチコック監督のオレはハリウッドに来たんだという単なる自慢のような感じもします。


ヒッチコック監督がどこに出ていたかは見逃しました。
そんなわけでTV2時間ドラマのような話のまあまあな作品でした。

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コメント

説明が上手ですね。私も最近観ましたが、この説明の上手さは素晴らしいの一言ですね。
僕的には、面白い作品でしたが、なんかラストシーンが少しガッカリしましたが、ヒッチコックらしいといえば、ヒッチコックらしいとおもいます。僕の断崖についてもトラックバックしておきます。

ディープインパクト さん、コメントありがとうございます。

ラストですが、ヒッチコック監督が当初考えていたのはリナが真相を書いた手紙を、手紙の内容を知らないジョニーが投函するとこでエンドとなっていたそうです。
これなら余韻があって単なるハッピーエンドでもないし後味も悪くないのでよさそうだと思えますが製作のRKOからの反対でダメになってそうです。
これが見たかったですね。

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