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2005.03.15

『マタンゴ』

この作品は本多猪四郎監督/円谷英二特技監督、久保明、土屋嘉男他主演の異色特撮ドラマです。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1963年 東宝 日本作品
ランニング・タイム◆89分
プロット◆難破して孤島に漂着してひどい目に合う話しのようです。
音楽◆別宮貞雄 軽快な感じと怪しい感じの音楽となっています。怪しさは全開になっています。
東宝発売の秘蔵のLDにて。画質はよいです。音声にプツプツのノイズが入りますがLPレコードと同じと思えばそんなには気にならない。DVDは4800円なので買いません。安くしたつもりのようですがまだ高い。しかも4700円ではなく100円高くするのが東宝らしい。他社とは違うと変なプライドを持っているようです。

キャスト
久保明→大学助教授の村井研二
土屋嘉男→会社社長の笠井雅文
小泉博→雇われ艇長の作田直之
太刀川寛→流行作家の吉田悦郎
佐原健二→下働き漁師の小山仙造
水野久美→ホステスが本業の歌手関口麻美
八代美紀→カマトトの大学生相馬明子
天本英世→変身途上のマタンゴ
中島春雄→最終形態のマタンゴ

カルト作品で有名な『マタンゴ』(1963年)はガキの頃にTV放映で見て怖かったものでした。最初はTVシリーズ『ウルトラマン』(1966年)のつもりで見ていましたが違うようなのでTVシリーズ『ウルトラQ』(1965年)のつもりにシフトして見てましたが、それも通り越したから印象が強烈でした。今見てもそんなに印象は変わらないでしょう。


本多猪四郎監督の演出はよい思います。
それと円谷英二特技監督の演出もよいと思います。
セリフが結構辛辣になっています。脚本は木村武。それにしてもよくこの脚本が通ったものです。マタンゴは怖いけど人間も怖い、これがこの作品のポイントのようです。
罵倒ゼリフに妙に筋が通っているのが東宝らしい。東宝にしてはセリフがかなり強烈なこの作品、それでもその罵倒ゼリフに一応筋が通っているのが何か変で東宝らしいのです。東映なら怒鳴ればいいセリフ音量のボリュームだけですから。
ロケのシーンでの霧はどうやっていたのでしょう。合成で処理しているとこもあります。
微妙に斜めの構図を多用しています。怪しい雰囲気が出ます。
1シーンの終るごとに溶暗を使っています。

全編に渡り妙な緊張感があります。
見ている人をとんでもない方向に引っ張り回す話しですし理路整然とマイナス方向に突っ走るキャラクターがそろっていて確かにカルト作品です。

プロローグ。
都会のある病室から話しは始まります。久保明扮する男が自分をキチガイ扱いしていると文句を言いながら何があったか話し出します。
「キチガイ」のセリフを連発していてそんなことを言ってるとTV放映が出来ないのではと見ている方が心配になります。
で、唐突にタイトルになります。これで回想になったことが薄れてしまいラストに回想からプロローグに戻るのが意外と思えたりします。
キャストやスタッフは合成されるヨットの帆に出ています。凝っています。
キャストで天本英世の名が入っていました。どこに出ているか普通に捜しますと絶対に見つかりませんのでご注意を・・・。

ヨットのシーンはセットとスクリーンプロセスが処理されています。
土屋嘉男扮する会社社長の笠井雅文は船長気取りの図となっています。土屋嘉男の演技がいい感じ。
男女計7人乗っています。

夜になって天気が悪くなってきます。
引き返そうと進言したい小泉博扮する雇われ艇長の作田ですが、笠井社長は君に任せると言いながら航海を続けることが望ましいと実は強要しています。
セリフでこのヨットは4000万かかっているから大丈夫の筈となっています。嵐でヨットはマストが折れたり、無線機に雷が落ちたり、エンジンがかからなくなったりして漂流することになります。とてもわかりやすい描写となっています。

一夜明けてさっそく口論となります。
雇われ艇長の作田を君のせいだと責める笠井社長。土屋嘉男の演技がいい。
ラジオニュースでは7人は絶望と言われています。電池も切れる。わかりやすい描写となっています。

ある夜に作家が巨大な黒い影 船の幻を見ます。このシーンは何となく印象にに残ります。
ヨットが漂流するロングショットが入ります。この作品はところどころにこのヨットが漂流するロングショットが入り何というか緊張感を出しています。

島が見えます。上陸して全員が砂浜に腹ばいになるとこが何となく凄い。船からようやく島に来てここが陸なんだと身体で感じたいように思えてしまいます。
霧がかかる中をジャングルを進みます。ここでもう強気になっている佐原健二扮する下働き漁師の小山です。

水を発見します。石が並べられていることから人が居ると推測します。
難破船を発見し男4人で調べます。国籍不明の海洋調査船とわかります。
巨大キノコの標本を発見します。Matangoと表示してます。作田の「食えるキノコだったらな」というセリフが印象に残ります。
女性2人は鏡がないことにも気がつきます。女性ならではでこれはいいシチュエーションです。
船長室は赤いカビに覆われています。そんな中から航海日誌を見つけ出します。
下働き漁師の小山は難破船にあった缶詰めを勝手に喰っています。一緒になって作家も喰っていたりします。

調べた結果、難破船の缶詰めは一週間しかもたないとのこと。
これからのことを会議中、笠井社長を呼びに行きます。ええとこのドラ息子役を土屋嘉男は完璧にこなしています。それは土屋嘉男本人がええとこのドラ息子だからでしょう。
会議は作家が絡んで荒れ模様となります。一応分担を決めて作業をすることになります。

作家は救助の目印となる烽火を上げています。回想に入ります。
キャバレー?にて。水野久美が吹替で歌い、作家が小説を書きまくります。
小説なんて過去の小説のコピペの組み合わせだと言ってます。それでも自分の手で執筆しているからまだマシではないですか。手書きは結構疲れるから。コピペの組み合わせになると知的労働ではなく字を書くことだけの単なる肉体労働ですけど。

ジャングルをライフルを持って探索する笠井社長と村井助教授。
島には動物が全くいません。割れた鏡の破片を発見します。何でこんなところにと言いつつ話しは進みます。
鳥もこの島を避けていると描写があります。ここでの鳥はアニメで処理されていました。円谷英二特技監督にしては珍しい手法と思ったが『モスラ』(1961年)でもアニメを使っていたからそうでもないですか。

ヨットを難破船の近くまで引いてきます。海面下には沈んでいる船が多数見られます。
ジャングルで木に生えているキノコ マタンゴを発見します。怪しい動く物影も発見し発砲する笠井社長。ところで東宝作品はどんな銃を撃っても銃声がいつも同じなのが難です、銃声ぐらいケチらなくてもいいのでは思えます。東宝汎用銃声といってもいいくらいです。

雨の降る夜に怪しい人影が難破船にやって来ます。
この変身途上のマタンゴを演じてるのが天本英世とのことです。特殊メイクと言うかマスクを被っているので当然顔ではわかりません。天本英世の素顔の方が怖そうな感じもしますけど。
笠井社長は缶詰めを盗み食いしようとしているとこです。他は寝ています。で、姿を表わす変身途上のマタンゴ。これを見た人達は震え上がります。小山だけはホントに寝てて見ていなかったようです。

一夜明けて皆に説教をする下働き漁師の小山です。
怒る理由が少し勘違いしています。女が原因ではないのですが。小山は作家と歌手がデキてることをバラします。最終的には食い物を見つけてこいとなります。

雨が降る中を食料を探します。
女性2人ですが幻聴がそれぞれに合った内容で聞こえます。幻聴は本人にしか聞こえないので、ここは妙にリアルです。
小山はウミガメの卵を見つけます。卵の1部は隠します。残りは持っていき皆で分けます。

作家は薬用アルコールを調合して飲んでいます。
また口論があります。作家は笠井社長に「君のことなんて誰も信用していない、仲間割れしたくないから黙っているんだ」なんて言ってます。凄いセリフです。どうやら笠井社長は怪しい影を追っていたと称していたようです。缶詰めを抱えてそんなことは通らないと思うけど、いつもこんな調子なのでしょう。
酔った勢いで作家はライフルを抱えてジャングルに向かいます。

また口論があります。作田は笠井社長に「飼い犬云々・・」のセリフを吐きます。凄いセリフです。小泉博の普段はいい人がブチ切れるとこうなる演技がいい。

ウミガメの卵を高値で笠井社長に売る小山。
売る方も売る方なら買う方も買う方です。このカネは絶対に持って帰ると意気込む小山です。

作家と歌手が逢い引き中に小山が乱入してもみ合います。
作家はキノコを食ったと言い人間ではないのだから何をしてもいいのだとかましますが、結局取り押さえられて別室に監禁状態となります。笠井社長はその部屋から追い出されます。

ヨットのショットがあり、そのヨット内にて。作田と笠井社長の会話。
笠井社長は食料を全部持って2人で逃げようと持ちかけますが断られます。小泉博のブチ切れ演技がいい。

村井助教授が難破船に戻ったとこで笠井社長が縛られていて作田が食料を全部持って行ったと話します。当然ヨットはありません。小山が隠した卵まで持っていっています。実は隠しているとこを見ていたのです。

作家は女2人を独り占めして男を撃ち殺そうとします。
偶然戻った小山から撃たれます。小山は絶命する。滑り落ちるローブが印象的。死体の側には持ち帰れなかったお札が散らばっていてハードボイルドな描写となっています。
そんなこんなで作家と歌手は難破船から追放されます。

弱音を吐く笠井社長は自分は自殺する勇気もないと言います。
村井助教授と明子が食料捜しに出たとこで歌手が笠井社長を迎えに来ます。歌手に連れられた笠井社長がマタンゴを喰い回想に入ります。回想というよりラリっていると言った方が合っているようです。曲芸ダンスの幻想を見ます。
で、最終形態のマタンゴが大勢出てきます。効果音というか鳴き声?がその後にケムール人やバルタン星人に流用されたようです。

ヨットが島に戻っています。
村井が調べると作田はいなくて壁に遺書が書き残されています。この内容が凄い。要するに自分が駄目ならあいつらも駄目だろうと勝手に全員死亡したってことにしています。この艇長は仲間を見捨てて脱出した癖にそんなことを書き残しているのです。
作田からみれば口車だけのインテリブルジョアと体力だけの肉体労働者に比べて、海で自分は知力体力共に優れていると考えているようです。論理的といえばそうなのですからこまったものです。

村井と明子が残っている難破船に複数の変身途上マタンゴが迫ってきます。
ここはマタンゴがいきなり襲いかかるサプライズなホラー演出となっています。
村井が応戦するが明子は連れ去られます。

変身途上マタンゴがやってくる理由は?となると殺しに来るのではなくキノコを食わせにくるようです。これも凄い。自分がこんな状態になったから他人にもそうさせようとするわけです。キノコの癖に実に人間的で凄過ぎです。

村井は明子を助けにマタンゴの場所に行きます。ですが明子は「おいしいわ、ほんとうよ」とマタンゴを村井に勧めます。これはサプライズで怖過ぎな展開です。
村井は命からがらにその場から逃げ出します。見てる方は何でそうなるの?となります。この人はヒーローではなかったのかと激しく面食らいます。
ヨットのショットがあって。村井はヨットに乗って島からも逃げ出します。
この辺の展開はそんなバカなの連続となってしまいます。

で、プロローグのシーンに戻ります。
回想から現実に戻り、また「キチガイ」を連発して厭世的なラストとなります。何も解決せず、村井の言動や現象が二重三重に厭世的となっています。

キチガイ扱いされるなら戻ってこない方ががよかった。
恋人と同じキノコになった方がよかった。
キノコは食わなかったと言ってるが実は自分を偽っていた。
ですからキノコへの変身が始まった。
こんなキノコ以下な都会より島の方がよかった。
等々・・・

村井は1番がんばったのに結果的に1番悔いが残ったようです。これも凄過ぎ。
ラストの都会の夜の街は実写を使ってもいいのに何故かミニチュアとなっています。何となく合っているのが凄い。

久保明の硬質的な演技や小泉博のブチ切れ演技に土屋嘉男のどら息子演技等、見るべきとこが多い。いつもはいい人役の小泉博や佐原健二がエゴむき出し演技をするから結構凄いです。どなたもそれほど演技派ではないので完全に演じ分けているわけではなく、いい人なのがにじみ出ているから、また不思議な感じなのです。

水野久美さんはルックスや声、口調から性格がキツそうな感じがしますが実は性格がよさそうです。新人女優が出れなくなって代わりに『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966年)に出るくらいですから頼まれると断れない性格なのかも。見かけとは随分と違うようです。

この作品ではボルトアクションのライフルをボルトも引かないで連射しています。こまったものです。ですが銃の本場アメリカ作品の『アナコンダ』(1997年)でも同じボルトも引かないで連射していたりします。これはジェニファー・ロペスがボルトを引くことが出来ないとか手に傷が付くとか言ってわがままでああなったのかもしれません。


この作品は実を言うと後味はそんなに悪くなかったりします。それはキャラクター全員が方向性はともかく全力を出し切っているからでしょう。
そんなわけで確かにカルトなよい作品でした。


東宝の変身人間シリーズ全4本
『美女と液体人間』(1958年)
『電送人間』(1960年)
『ガス人間第一号』(1960年)
『マタンゴ』(1963年)



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