『地球防衛軍』(1957年)
この作品は怪獣は出ない侵略物の特撮で、東宝特撮では初のシネスコサイズの作品となっています。
私は東宝特撮作品をガキの頃に地上波のTV放映でホトンド見ました。2005年現在では考えられないことです。スカイパーフェクTVでは放映していますけど無料ではありません。
なおこの文はネタバレ全開となっています。
1957年 東宝 日本作品
秘蔵のLDにて。画質はまあまあ。
プロット ミステリアンの侵略を受ける話のようです。
音楽 伊福部昭◆メインのスコアが最高にいい。鳴りまくりとなっています。
マーカライトファープが降下してくるとこで円谷英二のカット割りと伊福部昭の音楽がシンクロするとこがあります。偶然にシンクロしたようでめったにないことなので、ここは素晴らしいシーンと感心する。
キャスト
佐原健二→研究員の渥美譲治
平田昭彦→洗脳された研究員白石亮一
白川由美→妹の白石江津子
河内桃子→白石亮一の元婚約者岩本広子
三条利喜江→江津子の母
志村喬→安達博士
今泉廉→安達博士の助手の早見技師
村上冬樹→川波博士
中村哲→幸田博士
生方壮児→野田博士
→ドームに入った博士達のようです。助手は除く。
佐田豊→宮本警部
草間璋夫→戸川署長
大友伸→川田巡査
緒方燐作→尾形巡査
→誰が誰だかわからん。
山田巳之助→浜本国防庁長官
藤田進→森田司令
熊谷二良→井藤一佐
三原秀夫→江本司令
伊藤久哉→関隊長
中丸忠雄→出番の多い山本二尉
小杉義男→杉本司令
大川平八郎→防衛司令部渉外局長
加藤春哉→火事で死んだ仙造
大村千吉→火事で死んだ男 名前がわからん。
もう1人死んでいます。
土屋嘉男→ミステリアン総統
中島春雄→モゲラ
本多猪四郎監督-円谷英二特技監督の演出はよいと思います。
本編と特撮のつながりのよさには感心します。よほど絵コンテがしっかりしてたのでしょう。打ち合わせどおり撮って編集で整える。上手いものです。
円谷英二はサイレント映画の撮影出身の人です。ですから演出の手法がそれに従った手法になるそうです。
アクションの方向性をそろえるとこなんてそのようでミステリアンドームから攻撃は左か奥から、マーカライトファープからの攻撃は右か手前からとそろえてあります。
どうひいき目に見てもリアルには見えないミニチュア等が泣き所です。
サイレント映画の手法による正確なカット割り。
編集が最高に上手い。リズムがあります。ミステリアンドーム対マーカライトファープのシークエンスでは光線爆発の合間にミサイル発射のショットを入れてリズムを出しています。
効果音の種類が少ないけど上手く組み合わせた使い方が上手い。
少ない効果音といえば東宝は銃声がいつも同じで拳銃、ショットガン、ライフルでも全部同じ銃声だったりします。東宝汎用銃声と言ってもいいくらいです。興ざめする。銃声くらいケチらないでほしいと思うがもう遅いですか。
そんなわけで描写されている内容はともかく映画的手法にだけ注目すると実に上手く作っています。
あまりにも映画の手法が違うので円谷英二と黒澤明は仲が悪そうだけどホントのとこはどうなのでしょう。円谷英二の方が先輩なのですが興味深いとこです。
プロローグ。盆踊り大会です。
東宝特撮ではおなじみの森永チョコレートのタイアップがあります。
山火事のシーンでは合成の切り方等はさすが巨匠だとわけもなく感心する。でも他の合成シーンでは画調が全然違っていたりします。当時の技術的なことで仕方がないですか。
山火事で3人死亡。死ななくていいもののと思えます。
村にて地面が陥没します。
中丸忠雄の自衛隊員はもう出ています。
調べに行ったとこで巨大怪ロボットのモゲラ(怪獣ではない)が出現します。登場は結構早い、結構ジェットコースタームービーになっていてだれる間もなく次々と特撮シーンとなっています。
モゲラ登場の時に風呂に入っているのは白川由美の方です。それはビックリするでしょうね。
研究所にて。エアコンはまだなくて扇風機が回っています。暑そう。
巨大怪ロボットのモゲラは土木工事用のロボットでもあるようです。攻撃の方がついでなのかもしれません。
放水するシーンでは本編と特撮での放水の数がちゃんと合っていたりします。
M1ガーランド小銃を使っているようです。
火炎放射器を使用するとこでは本編-特撮と忙しくバンニングして切り替えています。つじつまは合っています。
鉄橋を爆破して何とかモゲラを仕留めます。爆発後に川の流れる効果音が入ります。爆発の後の静寂と対比が効いてて上手いと思う。
湖に調査に行ったとこでドームが出現します。
背後に流れているドームの効果音がいいのです。
指名を受けて科学者5人でミステリアンドームに入ります。
ドーム内のスクリーンはワイドサイズになっています。現在のTV並みではないですか。先見性があります。
当時の時事ネタで火星を土地を売ったり買ったりしているとセリフが出てきます。
2005年現在の時事ネタだとミステリアンはすでに女性3人を拉致していると言ってたりします。そうなるとミステリアンに協力する平田昭彦扮する白石亮一はさしずめ洗脳されているとなります。どこに?
交渉は決裂して自衛隊の第1次攻撃となります。音楽が最高なのです。
F86ジェット機のドームを攻撃する主観ショットなんかがあったりします。当時の撮影技術でよく出来たと感心します。
戦車はシャーマン戦車のようです。戦車から主観ショットもあったりします。
ここはドームからの光線攻撃であっさりと全軍壊滅的な被害を受けて撤退します。
ミステリアンは円盤を3機編隊で飛ばして直接一般市民に呼びかけるプロパガンダ放送の図となります。この行動はロジカルでかなりなものです。
会議があり、第2次攻撃となります。
大型の攻撃機アルファー号とベーター号が出動します。
ベーター号から核ではない強力爆弾が投下されますが効果はなく逆にベーター号はドームからの光線で撃墜されます。
ミステリアン側はドームの半径120km以内を占領すると強気に出てきます。首都圏が入っています。
青い大使館ナンバーのダッジとからビュイックとかのアメ車が集まって国際会議となります。
会議が停滞していたとこに唐突に新兵器の話となります。これはご都合主義もいいとこです。新兵器はマーカライトファープ。
準備のシーンでアメリカ軍のプロペラの巨大輸送機が見れます。これはこの頃からもうあったのかと興味深いシーンです。貴重な映像資料です。
会議で別の新兵器電子砲の完成を待たずにマーカライトファープによる攻撃を先行することになりミステリアンドーム対マーカライトファープ3機の攻防となります。
マーカライトファープが降下して攻撃準備となるシーンはいいです。
水攻撃がマーカライトファープ側は1機失います。残る2機で必死の攻撃となります。
ようやく第2ベーター号が到着します。
モゲラが地上に出る時にマーカライトファープが倒れてモゲラを道連れにまた1機失います。
残るマーカライトファープ1機も時間切れがせまり光線も途切れがちとなります。このへんが芸コマですいいです。
第2ベーター号の新兵器電子砲が連続発射となります。光線作画の出来はそれほどでもなかったりします。
ここの一連のシーンの編集がまた素晴らしい。光線を発射するマーカライトファープを積み重ねる編集がいいのです。遠いショットは長めにして、近いショットは短かめに、と簡単に言えばこうなるのです。これはサイレント映画の編集の手法だと思われます。
ドーム対マーカライトファープのシークエンスでは光線の発射爆発の合間にミサイル発射のショット等を入れてリズムを出しています。
マーカライトファープのパラボラ部で光線を受けてスパークするとこもいい。効果音がいいのです。
光線作画はまだ完成はされていないけどかなりいい感じになっています。効果音との組み合わせがまたいいのです。『怪獣大戦争』(65年)のあたりで光線作画は完成の域に達しているようです。
人質というか拉致された女性達の救出シーンとカットバックになっていますがあまり盛り上がらないような。それに平田昭彦の最後のセリフは付け足しが多すぎで字余りになっています。木村武脚本のセリフはよく書き込まれて言いたいことはよくわかりますけど多過ぎだと思います。
東宝特撮作品は出る俳優さんがいつも同じで、この人がまた出てると見るのが楽しい。特撮に出ない俳優さんも決まっているのですが。
佐原健二と平田昭彦はレギュラーのようなのものです。両者とも上手いとは言えない俳優さんですが特撮でも手を抜かずにくそまじめなとこがいい。
志村喬は何で出ているのかね。手は抜いていません。やっぱり『モスラ』(61年)の志村喬がいいです。
中丸忠雄は地面陥没の調査の時から登場してその後も出番の多い自衛隊の山本二尉を演じています。何だか怪しそうに見えてしまいます。そのうち電送人間になって消えてしまうのかと思えてしまいます。他の作品でも何をやったって怪しく見えるのですけど。
もしかして藤田進は大根なのかな。そうだったりして。
通訳をしている人がやけに目立ちます。誰?
ヒロインの白川由美と河内桃子のカマトト演技ぷりも何だか見ててむずむずしてくるけどそんなものでしょうと悪くはない。河内桃子の方がまだサマになっています。
意外とよく出来ています。そんなわけで特撮物の見本のようなよい作品でした。
日本映画は儲かっていて有り余るほどカネがあってなんだかんだとそのカネの大半が消えてその余りでかろうじてよい作品を作っていたのか?と思えます。ということはよい作品が作れていたのは1950年代後半から1960年代前半までとなります。私は大映と東宝が好みです。
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