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2005.03.12

『モスラ』(1961年)

この作品は本多猪四郎監督、円谷英二特技監督、フランキー堺、小泉博、香川京子主演の怪獣映画です。
ガキの頃にTVで見た東宝特撮作品を今見るとしょぼい出来か?そんなことはなくて意外と上手く作られていたりします。ミニチュアがしょぼいのは当時からわかっていることです。この点にはついてはどうひいき目に見てもリアルには見えなかったりします。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1961年 東宝 日本作品
ランニング・タイム◆101分
プロット◆小美人を持ち出したらモスラがやって来る話しのようです。
音楽◆古関裕而 歌はいいけど、スコアは少し単調な気もします。
東宝発売の秘蔵のLDにて。画質はよいです。画面は少し線ノイズ、音声はプチプチノイズが入ります。ノイズは進行はしていないと思いたい。

キャスト
フランキー堺→新聞記者の福田善一郎
小泉博→言語学者の中条信一
香川京子→新聞カメラマンの花村ミチ
ジェリー伊藤→悪徳興行師クラーク・ネルソン
上原謙→原田博士→
志村喬→新聞社デスクの天野貞勝
伊藤ユミ/伊藤エミ→小美人
ハロルド・コンウェイ→ロリシカ大使
中村哲→ネルソンの子分#1
オスマン・ユセフ→ネルソンの子分#2
小杉義男→座礁した第二玄洋丸船長
山本廉→航海士並木
加藤春哉→船員村田
中山豊→無線士本間
岩本弘司→操舵手
佐原健二→ヘリコプター操縦士
平田昭彦→国立核総合センター院長
河津清三郎→防衛長官

本多猪四郎監督、円谷英二特技監督の演出はよいと思います。
この監督コンビの本編と特撮のつながりのよさはいつものことです。
特撮の技術的なことだけだったら古びることがあると思えますが。円谷英二特技監督率いる東宝特撮は、しっかりした絵コンテによる正確なカット割り、抜群な腕前の編集、文字通り効果的な効果音。特に効果音を音楽のように使うのが素晴らしいと思えます。
そんなことから描写されている内容はともかく映画的手法にだけに注目すると実に上手く作ってあります。


プロローグ。
台風で貨物船が座礁するとこから話しは始まります。船の名は第二玄洋丸。ここからインファント島へとつながります。
救出されたのは4人のみ。このメンバーは山本廉や加藤春哉等のおなじみの俳優さんです。話しの中で原住民と言ってます。
この病院内にて、香川京子扮する新聞カメラマンとフランキー堺扮する新聞記者の福田が潜入取材のシーンでキャラ紹介となっています。
脚本はセリフでリードしてつなぐ手法が使われています。特撮作品ではよく使われています。

インファント島調査団が編成されたとこでジェリー伊藤扮するネルソンが登場。ネルソンは調査団を仕切ります。
船で出発となっています。まだ飛行機ではないことに時代を感じさせます。フランキー記者は船に潜入しますがあっさりとネルソンに見つかってしまいますが小泉博扮する言語学者の中条に助けられます。

インファント島に上陸して島の中ほどに進むとマット画の森となっています。警備担当となっているフランキー記者はM1カービンを持ってたりいます。M1カービンとは結構よいセレクトです。撃つシーンはないです。
言語学者の中条は吸血植物に捕らわれているとこで小美人を見ます。身長30 cm位とのことです。小美人は音波に敏感で調査団が使うトランジスタサイレンと称する電子音の警報に引きつけられることになっています。
ここで小美人を捕らえるネルソンですが、周りには反対する人達が大勢いるので放します。で、あっさりと調査団は帰国となります。

志村喬扮する新聞社デスクが登場して特ダネをオフレコ扱いにしたフランキー記者を怒鳴りつけます。ここの2人のやりとりが非常にいい。
言語学者の中条とインファント島で写してきた碑文をフランキー記者に解説しています。そんなわけで2人して色々と調べます、学会関係のことは中条が、外電等はフランキー記者がネルソンのことを調べています。

ネルソンは子分を引き連れてまたインファント島に渡り小美人を捕まえます。で、小美人で興業のシーンとなります。有名なモスラの歌が流れます。
結構長かったりしますがあまり気になりません。音楽は古関裕而です。
小美人が歌えば歌うほどモスラを引きつけることになるようです。

小美人に面会する中条、フランキー記者、花村カメラマンと子役。
突然日本語を喋る小美人にはテレパシーで相手のことがわかるというエクスキューズが付いています。お手軽です。こういう時はSFは便利です。
この後から小美人が歌うシーンで日本語でも歌うようになっています。妙なとこが緻密に出来ています。こうなるとなんとなく自然に風に思えてしまいます。
45分以上たってからモスラが卵から孵ります。前半丸々モスラは出てきません。この長さはまだお子さま達が劇場内を走り回らない当時ですから出来たことでしょう。
この構成で正解だと思えますけど現在では無理です。その対策として特撮シーンを延々と続けてもやっぱお子さま達が劇場内を走り回ると思います。こまったものです。

小美人を追ってモスラ(幼虫)は海を渡り夜の海で豪華客船に乗り上げて轟沈させます。モスラを下から照らすリアル無視な照明がよくて、このシーンもかなりなものです。
小美人興業のシーンがカットバックされています。この興業ですが現在なら小美人を巨大スクリーンに拡大してマルチにして見せるでしょう。

自衛隊のジェット戦闘機がモスラを発見します。
このシーンでのパイロットの口の動きとセリフがシンクロしていません。あまり東宝特撮作品らしいくないのでどうなってんの?となります。製作の時間がなかっただけ?
上空を通過するジェット機にモスラが水面から伸び上がって突っかかります。このシーンもいい。

自衛隊はモスラを焼却しようとします。
可燃物の入ったドラム缶を落としジェット戦闘機からのミサイル攻撃で点火させます。このシーンでジェット戦闘機の主観ショットで合成ではない本物の虹が一瞬見えるとこがあり有名です。
モスラを炎上して行方不明となります。すぐその後でモスラは海から突然奥多摩(だと思う)山中のダムに現れます。どこを通っていったの?と疑問ありますが、テレボートしたのかもしれまん。

ダム決壊から橋が流されるとこで赤ちゃん救出のシーンがあります。
ここも中々の編集の出来です。説明セリフがホトンドありません。この点は偉いというかサイレント映画からの手法なのでしょう。
小美人興業は中止にされMPがネルソンの元に行きます。1961年当時の日本にまだMPがいたのか?という疑問もあります。→全然報道されないので目立たないけど現在でもMPは存在するようです。

モスラが東京に向かい移動をするので住民が通りを走り避難するモブシーンがあます。ここは『機動警察パトレイバー』(1989年)に少し変えて引用されているシーンがあったりします。少し変えているとこがまともです。
ところでアニメは東宝特撮作品の効果音の使い方もよく引用しています。よいとこはどんどんと引用した方がいいと思います。そっくりコピーではダメですけど。

渋谷に現れるモスラは突進して東横デパートを破壊します。
ここの東横デパートを切り返すショットを微妙にダブらせる編集が絶妙です。効果音の使い方も上手いし。ここでの一連のシーンがこの作品の白眉です。素晴らしい。
カメラは低い位置に置かれています。当時はカメラ位置の自由度が低いので珍しかったりします。

東京タワーに取りつくモスラ。糸を吐き繭を作ります。
ヘリコプターがモスラの糸に接触して墜落します。糸の威力を説明セリフ無しで見せてくれます。とにかくショットだけで見せるようにしているようです。

繭が完成したとこでロリシカから原子熱線砲が提供されて攻撃を開始します。
10時攻撃となりカウントダウンがあります。熱線から目を保護するためにカッコいいサングラスをかけます。
原子熱線砲の描写で光線の出るタイミングに長さ、効果音と見事な演出です。これが東宝特撮作品の優れたとこなのです。
繭を焼かれますがモスラと成虫となり飛び立ちます。ロリシカに向かうアニメで描写されたモスラが小さく上空に見えるフルショットがいいです。

ネルソンは一足先にロリシカ本国に高飛びしています。子分2人を連れています。
パンナム機に乗ってロリシカに向かう中条にフランキー記者と花村カメラマンの3人。本物ではなくミニチュアのパンナム飛行機となっています。ミニチュアで撮るのはライブで撮るより安上がりでいいと思うけど少し違和感はあります。

ロリシカの大都市ニューカークシティを破壊する成虫のモスラ。
飛んでいるモスラ、強風、砲撃はあるが発射している側は見えない、崩れるビルディング。ショーウィンドウに飛び込むクルマ。これらのショットを編集で何とか仕上げています。プロデューサーの要求で突然増えた部分のシーンを撮る苦労が忍ばれます。

飛行場にモスラを引きつけるマークを白線でペイントする作業車。
このシーン何となく印象に残ったりします。白線をペイントする作業車が印象に残る作品で『バニシング・ポイント』(1971年)もあります。


キャストについて
フランキー堺は好演しています。他の作品と同じ調子です。作品によってわけへだてしていないのは偉いと思います。
小泉博は特撮作品のレギュラーで、いつもの通りです。フランキー堺とのやり取りがいい。いいコンビです。
香川京子は何となくノリがイマイチに見えたりする。溝口健二監督や小津安二郎監督の作品に出ている私が何でこんなお子さま向けゲテモノ映画に出なくてはいけないの?と画面ににじみ出ているような気がするのは私の偏見のせいか。それでもいつもの東宝特撮ヒロインのカマトト演技ではないとこは評価出来ます。
ジェリー伊藤はホントに憎たらしい悪役を好演しています。現在でも日本によくいる日本語が喋れるだけの外人タレントのプロトタイプといったところです、
志村喬のキャラはいいです。イヤミにならないのがさすがです。
医者の平田昭彦とヘリコプターのパイロットの佐原健二とほんのちょい役でした。豪華なキャストです。それにしても佐原健二の演技はTVシリーズ『ウルトラQ』(1965年)とホトンド同じでした。このへんが同じようで同じではない志村喬とは違うのです。


モスラとオームのことで。
東横デパート破壊シーン等のモスラの脚はただぶら下がっていただけで意外と気になったりします。そんなことから『風の谷のナウシカ』(1984年)での怪獣?オームの脚が余計なほどに見事に動いているのを見るとオームはモスラの幼虫のバリエーションなんでしょうと思ってしまいます。モスラの脚がちゃんとしたのがオームなのかもしれません。


東宝の宣伝する黄金トリオは田中友幸、本多猪四郎、円谷英二となっていますが、一般的にはそうではなく田中友幸が落ちて、本多猪四郎、円谷英二、伊福部昭となっています。実際そんなものです。

“技術は古びるけど映画の演出手法は古びない”と思います。
改めて見てもよく出来ているではないですか。本物の娯楽作品です。


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