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2005.02.27

『ミッドナイトクロス』(1981年)

この作品はブライアン・デ・パルマ監督、ジョン・トラボルタ、ナンシー・アレン主演の巻き込まれサスペンスです。
ブライアン・デ・パルマ監督の凝りまくりの映画手法がいいのです。
私の大好きな作品の感想です。なおこの文はネタバレ全開となっています。

1981年 ジョージ・リットー・プロ/オライオン・ピクチャーズ アメリカ作品
ランニング・タイム◆107分
原題◆Blow Out
プロット◆大統領候補暗殺事件に巻き込まれる話しのようです。
音楽◆ピノ・ドナジオ
20世紀フォックス発売のDVDにて。画質は非常によいです。20世紀フォックス発売でMGM作品となっていますが当時の製作はオライオン・ピクチャーズです。

キャスト
ジョン・トラボルタ→映画の効果担当ジャック
ナンシー・アレン→ヒロインのサリー
ジョン・リスゴー→謎の暴走工作員バーク
デニス・フランツ→カメラマンのカープ
ピーター・ボイデン→ホラー映画の監督サム
ジョン・アキーノ→捜査担当のマッキー刑事
カート・メイ→TVレポーターのフランク・ドナヒュー
ジョン・マクマーティン→大統領候補の選挙参謀ローレンス・ヘンリー
ルディ・トラモンタナ→潜入捜査官フレディ

ブライアン・デ・パルマ監督の演出はよいと思います。
この作品のタイトルが傑作です。アナログメーターの指針がキャストやタイトルを描いていきます。センスがよく凝っています。
カメラがぐるりと回ってジョン・トラボルタ扮する主人公ジャックの仕事ぶりをカメラの動きだけで描写しています。上手いです。

舞台はアメリカ東海岸の都市フィラデルフィアとなっています。
ロケの効果はよく出ていると思います。フィラデルフィアのシンボル自由の鐘が出てきます。出し方に問題がありそうでこれでよく協力してくれたなと感心します。

プロローグの劇中映画ではパンツを履いたままセックスをしてます。
馬鹿馬鹿しい設定です。それとも倫理コードでこうなってんのかな?

ブライアン・デ・パルマ監督の得意技のクローズアップと遠景を並べて合成する手法が素晴らしい。
特にフクロウが出ているシーンがいい。クルマの音に反応して振り返ったり銃声にシンクロして飛び立つとこなんて最高です。映画的手法の極みです。その他にもこの合成シーンを多用していています。

これも得意技のスプリットスクリーンも使っています。これもいいです。
俯瞰のシーンも印象的に使っています。

フォーカスが手前から奥にとかその逆の動き。
これも印象的に使われていました。白眉は駅のトイレで街娼を絞殺する時の腕時計に仕込まれているワイヤーのクローズアップです。

ガンマイクを使って映画効果用の風の音を録音するジョン・トラボルタ扮する映画の効果担当ジャック。
ついでにアベックの会話も録音していました。カエルの鳴き声からフクロウを録り。そこから事件へと巻き込まれることになります。

事故から救出劇を経て病院からモーテルへとなります。
このシーンは回るテープリール→再生ヘッドをこするテープ→ヘッドホンケーブル→ヘッドホンと音の流れをカメラが追います。このシーンもいい。
事故の録音を聞き直して検証するジャック。テープを戻して聞いて戻して聞いての繰り返しでいかにも音のプロといった感じです。

雑誌に掲載された事故の連続写真を切り抜いて撮影してフィルムにしてつないで再生しています。
この作品での白眉のシーンは事故現場を録音したテープから銃声音を捜し出して事故の連続写真とシンクロさせるとこです。これらをどうやってやるか説明セリフを使わずに視覚的にわかりやすい描写で見せています。これが映画ですといった感じです。上手いです。
ブライアン・デ・パルマ監督は映画を撮るより大企業や軍向けの機材の取り扱い説明や訓練用の映像作品を撮った方がカネになるのでは思ってしまいます。

ナンシー・アレン扮するサリーに警察時代のことを話して回想に入るジャック。
通称ワイヤーとは隠しマイク+送信機だとはこの作品で知りました。

この件を警察に届けに行くジャック。
担当刑事はジャックの内部調査をしていた警察時代のことを知ってていまだにスパイと敵視しています。
で、届けた録音テープは中味が消えていた。そしてジャックの仕事部屋のテープも全て消されていたとなります。このシーンはカメラが回ります。何周も回ります。1周するたびにテープレコーダーに駆けられてるリールの数が増えていきます。俯瞰で締めるいいシーンです。

TVレポーターのフランク・ドナヒューと会うジャック。
TVで音と映像がシンクロしている証拠のテープを放映することになります。
正直言ってTVは強力なプロパガンダのメディアであることは否定出来ないことです。現在のこの国の地上波放送のひどさがそれを表わしています。カネのかからないといってタダの地上波放送のTVを見ているとマジで白痴になります。TVを見ると白痴になるというのはもう証明されていますか?。

駅にて電話ボックスの並ぶシーンはアルフレッド・ヒッチコック監督の『北北西に進路を取れ』(1959年)からの引用なの?と思わせますが、これがかなりお下品になっています。こういうとこがオリジナル作品をスポイルしていると非難されるとこなのです。

TVレポーターのフランク・ドナヒューになりすましてサリーと証拠をおびき出す工作員バーク。直前までは連続殺人犯になって電話をしていました。忙しい人だ。

この作品で見てて引っ掛かるとこはTVレポーターのフランク・ドナヒューに会いに行くのに何でサリー1人だけで行かしたのかと疑問が出るとこでしょう。2人で会いに行けば何でもなかったからです。これをおかしいと思った人の評価は下がることになります。
多分ラストシーンありきで話しを組み立てたらそうなってしまったのだと思います。せっかく前振りをしたワイヤー(隠しマイク+送信機)を使いたいのも大いにあったのでしょう。そうしないと主人公のキャラクターが生きないから悩ましいとこです。そういうことですからここは主人公のジャックが疑心暗鬼に陥って正常な判断が出来なかったということに好意的に解釈しましょう。

ジョン・トラボルタ扮するジャックは元警察内部不正捜査班で今はB級映画の効果担当をやっている設定です。
ジョン・トラボルタはこの作品では各種機材を扱う特訓をしたでしょう。手慣れた感じにいかにも技術者といった感じに見せていました。アメリカ映画のこういうとこは感心します。
ダンススターから転向しようと熱演のジョン・トラボルタですが、この熱演も公開当時は全く無視されていました。今見ると好演しているじゃないですかとなります。

45分頃に本格的に登場するジョン・リスゴー。依頼されている以上のことを勝手に実行する正体不明の謎の暴走工作員バークを見事に演じています。ジョン・リスゴーにしては抑えた演技がまたいい。
ジョン・リスゴーは『レイジング・ケイン』(1992年)より前にこの作品で1人何役をやってました。連続殺人犯とTVレボーターになりすましています。これもいい。

花火のシーンがあるクライマックスもスローモーションを多用していていいシーンです。ここは花火の使い方が全然違うので『泥棒成金』(1955年)からの引用ではないように思えます。

ナンシー・アレンは当時のデ・パルマ夫人でした。それなりに好演していました。

結構痩せているじゃないデニス・フランツ。ランニングシャツが妙に似合います。デニス・フランツはデ・パルマ監督作品の常連です。いつもケチな悪党の役です。そんなこの人はTV界では『NYPDブルー』(1993年-2005年)で有名なそうですが何故かカントリーのディキシー・チックスのミュージッククリップ『Goodbye Earl』にも出ていたりして、いい歳こいて若作りで暴力亭主を演じてすぐに毒殺されていました。変わった人だ。

ジャックの乗るクルマはジープです。
かっこよく使われていてジープの宣伝のようでした。このクルマが素敵に見えます。追跡しての成り行きで記念パレードに突入してからショーウィンドウに突っ込みますが、そこは何故か絞首刑のディスプレイがしてあったりします。これは何か意味があるの?

これは公開当時この邦題は最低ですと思っていました。
元ネタは今ではアートシアター物として残っている『ミッドナイト・エクスプレス』(1978年)と、今では忘れ去られたパニック物『カサンドラ・クロス』(1977年)の合体です。慣れてきたのか最近は原題のBlow Outとは全然違いますが話しと合ってると『ミッドナイトクロス』でも悪くないのではと気が変わってきました。


そんなわけで映画館で見た時はそれほどとは思っていませんでしたが、再見するとこれはホントに傑作だとなります。
サスペンスもありますが全編に渡る映画的表現が出色の出来の傑作だと思います。


クエンティン・タランティーノ監督のおかげでスターに返り咲いたジョン・トラボルタといえば、モータースポーツ ナスカーのゲストで登場してスタート・コマンド「gentlemens start your engines」を1番カッコよく決めているのが印象的なのです。さすがスターは違うと感心します。


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コメント

いや、むしろ映像は酷いと思います。
指摘されていることはよくわかりますが、これらはよく安っぽいドラマで使われている手法です。
それ以外もパンと固定カメラのよくある映像ばかり。
さらにアントニオーニの「欲望」に影響されて(というかオマージュ、パクリ)作ったという点に呆れます。しかも、原題のBlow Outというのも、この「欲望」の原題Blow Upのパクリであることは一目瞭然です。
申し訳ないけど、演出・映像・脚本と、すべてが安っぽいと感じました。
デ・パルマはまだ「キャリー」のほうがいいと思います。

さといもさん、コメントありがとうございます。

デ・パルマ監督はいつも同じことをしているので、そんなことを気にしていたらデ・パルマ監督作品は見れません。
作品の出来がよければいいと気にしていません。そんな感じで『ミッドナイトクロス』はよく出来ています。

『欲望』はアントニオーニ監督が自由気ままに制約無し作ったようなのでとても普通のサスペンスとはいえないでは?、
そんな感じで引用は原題名と証拠のアイデアだけで全くジャンルが違うの比較出来ません。

『キャリー』は凄く悲しい話しで見るのがつらかった。いい作品なのは同感します。

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