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2005.02.27

『愛のメモリー』

私の大好きな作品の感想です。ブライアン・デ・パルマ監督のトリッキーな愛の物語です。
なおこの文はネタバレ全開となっています。

1976年 コロンビア・ピクチャーズ アメリカ作品
原題◆Obsession
プロット 風変わりな親子再会の話しのようです。
DVDにて。画質よいです。ソフトフォーカスはこの作品の撮影コンセプトとのこと。
音楽 バーナード・ハーマン、音楽はステレオで以前買ったLDよりクリアになっていて聞きごたえがありました。
この作品で2人が組んだことはバーナード・ハーマンにとってもブライアン・デ・パルマ監督にとってもいいことだったと思えます。ハーマンはオーソン・ウェルズで始まって、途中はアルフレッド・ヒッチコック、最後はマーティン・スコセッシにブライアン・デ・パルマとなります。これだけでなく他にも色々とやっていて素晴らしいキャリアです。

キャスト
ジュヌビィエーブ・ビュジョルド→1959年のエリザベス/1975年のサンドラ/1959年のエイミー
クリフ・ロバートソン→不動産屋のコートランド
ジョン・リスゴー→共同経営者のロバート
スタンリー・J・レイズ→1959年のブリー警部
ストッカー・フォンテリウ→主治医のエルマン
シルビア・クンバ・ウィリアムズ→メイドのジュディ

ブライアン・デ・パルマ監督の演出はよいと思います。
タイトルだけで2人のなれ初めを描写しています。戦争でイタリアに行った時に知りあったと分かります。
ニューオーリンズ1959年から話しは始まります。妻子が誘拐されて救出作戦が失敗して死亡となります。そしてしクリフ・ロバートソン扮する不動産屋のコートランドが死んだ妻子の墓が作られていくのを眺めているとカメラがその周りをぐるりと1周します。そうするとカットを割らずにワンショットで1959年から1975年になってしまいます。よいシーンです。DVDで見るとブルドーザーと墓の合成の境目が分かりますけど。ワンショットではなくつないでいるじゃないかとは言ってはいけません。
サム・ライミ監督の『ダークマン』(90年)ではこのバリエーションでヒロインが爆発する恋人のいるアパートを見てるショットから一気に墓の前のショットになるシーンがありました。これもよかった。

脚本の設定通りのリアル、らしさを取るか、ショットやシークエンスの映像的なカッコよさを取るかここがポイントで、この作品ではもちろん映像的なカッコよさを取っています。だから批評では、らしさ、つじつま合わせのとこでいつも突っ込まれています。この点は元ネタの『めまい』(58年)でもよく言われていました。

会話シーンを切り返しを使わないでカメラのパンニングで処理しているとこがありました。クリフ・ロバートソンとジョン・リスゴーのトークにわざわざ使うことはないのにと思ったりします。
高速度カメラで蛍光灯を撮ればチラついてしまうのは分かっていたのかな。通路を移動するとこを下から撮っている似たようなシーンが『機動警察パトレイバー2』(93年)にあったような。移動するとことバックに見える天井の蛍光灯の配置がよく似ています。

フィレンツェとニューオーリンズが舞台になっています。フィレンツェではスクーターのベスパの排気音が聞こえました。『ローマの休日』(53年)のようです。
フィレンツェのシーンは結構長いけどこれは必要な長さと思えます。一応母の死がきっかけにイタリアを離れることになってて不自然な感じには見せていません。上手い脚本ではないですか。

ニューオーリンズの会社のオフィスからスーパードームが見えます。
路面電車が走っていました。これは欲望という名の電車か?。

アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』(58年)から作られているこの作品ですが、私にとって決定的なアドバンテージを持っています。それはヒロインが『めまい』のキム・ノバックよりこの作品のジュヌビィエーブ・ビュジョルドのほうがいいのです。これは決定的ですな。これに勝るものはない。それと演じるキャラクターのバランスの曖昧さもアドバンテージになります。

『めまい』のテイスト全開でフィレンツェでクリフ・ロバートソンがサンドラ役のジュヌビィエーブ・ビュジョルドの彼女の行動を尾行して調べるシーン等もいいものです。現在では単に危ない人になってしまいますが。尾行とストーカーの区別はどうやってつけるのか?興味深いものです。
食事に誘うシーンも『めまい』そのまんま。でも方向を変えてあるしデ・パルマ監督ですからいいんです。
エリザベスとこんな歩き方だったと指導するシーンなんかあります。

そんなこんなで途中はオカルト物のノリになっています。それからまたサスペンスとなっています。2回目の脅迫状は1959年の新聞の切り抜きを使っていたのです。ですから文面が丸っきり同じというわけです。
ことの真相が明らかにされるとこでは現在と過去が交互になって描写されています。ジュヌビィエーブ・ビュジョルド1959年の娘のエイミーになって母のエリザベスにすがるショットがあったりします。このへんのトリッキーさがデ・パルマ監督のいいところ。でも公開当時はぼろくそに評されていたことでしょう。

母のエリザベスは1931年生まれで娘のエイミーは1950年生まれとなっていました。墓にそのように刻まれてあります。
この墓の形が2人が知りあった教会は同じ形をしているのがポイントです。
実の娘とキスしているシーンがありましたがこれでよく検閲が通りましたな。検閲をごまかす何かいいエクスキューズがあったの?
ジュヌビィエーブ・ビュジョルドが飛行機で手紙を書くシーンでは字を左手で書いてはいません。

ブライアン・デ・パルマ監督のヒロインの好みがイマイチ分からない。たまたま結婚していたけどナンシー・アレンタイプではなさそうですが。
ジュヌビィエーブ・ビュジョルドはエキセントリックな美人と言えるでしょう。この人の作品は意外と見てます。
サンドラはイタリア人ということになっていますがジュヌビィエーブ・ビュジョルドはカナダ人なのでしょう。そんなことを言ったらきりがないですか。

ジョン・リスゴーは悪役をやってます。何回か見てると最初から怪しく見えてしまいます。
よくある疑問で何で10何年も復讐の機会を待っている?にはこの人は仕事のパートナーに愛憎半ばする感情を持っていると思えたりします。屈折しています。この作品は愛憎がテーマなのかもと思えてきました。


DVDのメイキングを見て。
ソフトな画調は画質が悪いのではなくそのような意図があってのこと。
デ・パルマ監督初のワイドスクリーン作品とのことです。会話シーンのパンニング切り返しはワイドスクリーン使用のお遊びとのことです。
高速度カメラで蛍光灯を撮ればチラついてしまうのは分かっていて使ってるそうです。
最初の方の脚本では父と娘は近親相姦まで行ってしまいそのせいで娘は気が狂って母になってしまうとのとこ。これも凄いな。しかしこの脚本通りにすると倫理コードもあるけど主人公が刑務所に入ったりして全編で3時間くらいになってしまうので妥協したそうです。ですから、あれだけ細かくフィレンツェの出来事を描写していたのがいきなり全ては仕掛けでしたと木に竹を接いだような話になってしまったようです。

何かラストが拍子抜けのようにも見えますがいいことにしましょう。娘のジュヌビィエーブ・ビュジョルドは大感激なのにパパのクリフ・ロバートソンが何だい娘だったのかという感じに思えたりします。とはいえよい作品には違いありません。

そんなわけでブライアン・デ・パルマ監督らしいトリッキーなよい作品でした。

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コメント

『愛のメモリー』の放送を見て、面白い映画だなと思い、色々検索してここに辿り着きました。とても参考になりました。

「愛のメモリー」って「オールドボーイ」に似てるなっと思いました。
復讐、黒幕の旧友、愛娘の恋人。
ジュヌビィエーブ・ビュジョルドは好きです。

コメントありがとうございます。

『オールドボーイ』は見ていないでよくわかりません。
そのうちに見たいと思います。

ジュヌビィエーブ・ビュジョルドはよかったですね。
私はジュヌビィエーブ・ビュジョルドでこれ1本だとしたら『愛のメモリー』だと思っています。

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